(1) 環境刺激による葉の形態制御の研究 これまでの研究により、R. aquaticaは生育温度に応じて発生する葉の形を変化させ、低温(20℃)では葉が複葉化してギザギザになり、高温(30℃)では葉が単葉化することがわかっている。また、生育途中で生育温度を変化させると、4日後には新しい環境に応答した葉の形になることもわかっている。そこで、生育途中で温度を変化(20℃→30℃、または、30℃→20℃)させたあと、経時的(1日、2日、4日)にRNAを単離し、RNA-seq解析をおこなうことで、温度変化に応答した遺伝子発現の変動を追跡した。その結果、KNOX1遺伝子などの葉の形態制御に関わる遺伝子群の発現が、温度移行後1日目には変動していることが明らかとなった。また、移行後にオーキシン関係の遺伝子群の発現が変動していた。KNOX1遺伝子はオーキシンにより発現制御を受けることから、温度変化によるオーキシン量の変動が葉形を決定している可能性が示唆された。 (2)水没に対する応答機構の研究 R. aquaticaは、水没すると葉の形態を大きく変化させる。また、気中では葉の表裏の両面に気孔を形成するが、水没葉では気孔の形成が抑制されることがわかった。そこで、水没をどのように感知して葉形を変化させているのかを分子レベルで明らかにするため、水没応答のトランスクリプトーム解析を進めた。RNA-seq解析の結果、水没に応答して嫌気呼吸に関する遺伝子の発現が変動していることがわかった。今後、葉の形態変化や気孔に関わる遺伝子の発現を調べることで、水没応答の分子基盤を明らかにできると考えられる。
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