公募研究
これまでの解析から、RDR1,RDR2,RDR6の3重変異体(rdr1/2/6)でアンチセンスncRNAの発現が野生株と比べて減少する事を見出している。rdr1/2/6の3重変異体および野生株を用いて乾燥ストレス過程におけるトランスクリプトームをシロイヌナズナカスタムアレイを用いて解析し、乾燥ストレス条件下でrdr1/2/6におけるアンチセンスncRNAの生成量が野生株と比べて減少する遺伝子を1,136個同定した。これら遺伝子領域において乾燥ストレス条件下でRDR1/2/6依存的なsiRNAの蓄積は観察されなかった。本研究代表者の研究室では、種々のRNA代謝に関与する遺伝子に関して、破壊型ホモ変異系統の整備を進めている。それら変異系統を用いて、アンチセンスncRNA の発現量が変化した変異体の探索を進めた。変異体の探索は、乾燥ストレス条件により強く発現誘導されるアンチセンスncRNAの1つであるRD29AアンチセンスncRNAの発現量を測定することにより進めた。その結果、DCP5遺伝子の変異体において発現量が減少し、XRN4遺伝子の変異体において発現量が増加していた。これらの結果は、センスRNAがDCP5によりdecappingされた後、センスRNAの分解産物を鋳型として、RDR1/2/6によりアンチセンスncRNAが生成することを示唆する。乾燥ストレス処理と再吸水処理を3回繰り返し行った結果、rdr1/2/6の三重変異体において、野生株と比べて再吸水後の根の成長再開が遅れ主根が短い表現型を示した。この表現型はRDRファミリーの単一変異体や二重変異体、dcl2/3/4の変異体では観察されなかった。この結果はRDR1/2/6依存性のアンチセンスncRNAが既知のDCL2/3/4依存的なsiRNA生成を介さずに生理的に機能している事を示唆する。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り下記研究成果を得ている。1)RDR1/2/6により環境ストレス誘導性のアンチセンスncRNAが生成する遺伝子を大量同定。2)環境ストレス誘導性のアンチセンスncRNAの生成に関与するDCP5やXRN4などの遺伝子を同定。
これまでの研究によって、乾燥ストレス下でRDR1/2/6により2本鎖RNAが生成し、mRNA分解が促進される事が示唆された。今後XRN4とDCP5やRDR1/2/6の多重変異体を作成しPoly A(+)やPoly A (-)のセンスRNAおよびアンチセンスRNAを解析することで、RDR1/2/6がmRNAの分解産物を鋳型としているのか明らかにする。RDR1/2/6依存的なアンチセンスncRNAの乾燥ストレスから再吸水過程における機能を解析するため、顕著な表現型が観察されたrdr1/2/6変異体と野生型植物の根組織におけるトランスクリプト―ムの比較解析を行う。他のRNA代謝関連遺伝子の変異体を解析することにより、アンチセンスncRNAの生成に関わる新規な因子を同定し機能解明を進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Front. Plant Sci.
巻: 7 ページ: 2039
10.3389/fpls.2016.02039
Plant Signaling & Behavior
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10.3389/fpls.2016.00853
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10.3389/fpls.2016.01079
http://www.csrs.riken.jp/jp/labs/pgnrt/index.html