研究実績の概要 |
欺き行為は、事実ではないことを他者に信じさせる行為であり、自己と他者の心的状態の差異の理解や行動の予測といったASD児が困難さを有する能力が必要とされる。本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を対象として、他者を欺く行為の神経基盤の解明するため、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて脳機能、脳形態の両側面から検討することを目的とした。 脳機能的側面に関しては、欺き課題(Yokota et al., 2013を改変)遂行中の機能画像解析より、ASD児は定型発達児と比較して、欺き条件では右下頭頂小葉における賦活が有意に高いことが明らかとなった。また、Autism Quotient(AQ)によるASD傾向の強さと欺き行為における賦活との関連について解析を行った。その結果、ASD群においてのみ、両側前帯状回と右前島において、AQスコアとの有意な正の相関が明らかとなった。 ASD児において欺き行為に関連する脳機能については、下頭頂小葉が挙げられ、真実を抑制し、欺き行為を行うため、反応抑制に関わる領域の賦活がより高まったと考えられる。また、ASD傾向との関連から、ASD群においてASD傾向が強い場合、共感に関連する前帯状回、島の賦活が高まることから、ASD児はTD児と同様の課題成績を示すためによりエフォートが必要となると考えられる。 脳形態的側面に関しては、拡散テンソル画像を機能画像データ取得の際に撮像しており、白質の微細構造や水の拡散性などの指標について解析を行い、脳形態的におけるASD児の特異性について検討していく予定である。
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