研究領域 | 共感性の進化・神経基盤 |
研究課題/領域番号 |
16H01487
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 裕子 京都大学, 野生動物研究センター, 特定助教 (60621670)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チンパンジー / 比較認知科学 / リズム同調 / 社会的知性 |
研究実績の概要 |
これまでの実験から、聴覚刺激によってディスプレイ等で見られるリズム運動が誘発されることがわかっている。また、観察から、発声や覚醒度も上昇することが明らかになっている。 そこで本年度は、こうした刺激を複数個体いる場面で提示することで、リズム音が社会的な関係に及ぼす影響を調べた。2ペアのチンパンジーでプレイバック実験を行ったところ、1ペアについては、リズム運動から遊び行動が誘発される等、個体間関係のつながりに影響をあたえる行動が観察された。発声や動きの大きさ等を分析した結果、個別に音を提示したときと同様に、性差が見られた。オスのチンパンジーはより反応が早く、また音によって誘発されたリズム運動も長く続いていたのに対して、メスのチンパンジーは反応が小さかった。 また、各個体の覚醒度をビデオ分析した結果、リズム音を提示していても、個体間でインタラクションがない場合には、一方が覚醒度の上昇を示しても、もう一方にそれが伝染するという傾向はみられなかった。その一方、個体間で遊びなどのインタラクションが見られた場合には、双方の覚醒度が高くなる様子が観察された。 上記の実験に平行して、リズム音提示前後の唾液・尿の採取を行っている。しかしながら、繁殖計画によって対象個体を実験につれてくる機会が少なかったため、今後継続して採取する予定である。こうした遅れは想定内であり、来年度にむけて対象個体を増やす事で、十分なサンプル採取の機会を設ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繁殖計画により対象個体の十分な唾液・尿サンプルを採取する機会を得られなかったものの、想定の範囲内であり、今後は対象個体を広げることで、迅速に必要なサンプルを採取する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験室内だけではなく、日常の社会的交渉場面も対象に、共感性・親和性の上昇に関係するディスプレイを対象に、コミュニケーションの時系列的な分析と生理状態を調べる事を予定している。実際にチンパンジーが行うコミュニケーションにおけるリズム同調や引き込みの要因を検討する。
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