研究実績の概要 |
視床下部で分泌される神経ペプチドは、動物の社会性に大きく影響する。オキシトシンは線虫からヒトまで幅広く進化的に保存されている神経ペプチドであり、哺乳類においては、つがい形成や母子関係の構築といった社会行動に幅広く関与している。興味深いことに、オキシトシンの効果は社会的関係を築く二個体の間でポジティブフィードバックが働く。しかし、共感をはじめとする社会行動では二個体間の相互作用が重要であるにも関わらず、オキシトシン神経活動の二個体間のパターン類似性がどのように行動に影響を及ぼすのかについては全く分かっていなかった。本課題では、オキシトシン神経が同期して活動することで社会的な絆が形成されるという仮説を検証することを目的とした。 平成29年度の研究実績としては、領域内の他班との共同研究の成果として2報の論文が掲載に至った(Nasanbuyan, 2018-Endocrinology; Kikusui, 2018-Behav Brain Res)。本課題では遺伝子発現の制御をするために自作のアデノ随伴ウイルスベクターを用いており、領域内の関連する班に技術提供を行った成果である。具体的にはオキシトシン神経特異的に細胞膜移行型GFPを発現させることによる投射先のトレーシング、および投射経路選択的な遺伝子発現とDREADDシステムによる神経活動制御について担当した。また、過年度においてオレキシン神経において達成したファイバーフォトメトリーによる神経活動の記録を、平成29年度はオキシトシン神経に導入した。現在進行中の二個体間の同期性解析やその他の共同研究プロジェクトに関しても近いうちに成果発表につなげたい。
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