研究領域 | 共感性の進化・神経基盤 |
研究課題/領域番号 |
16H01490
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 暢哉 関西学院大学, 文学部, 教授 (70465269)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 向社会的行動 / 援助行動 / ラット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,研究代表者の研究室で開発した実験パラダイムを使用し,ラットを対象として,援助行動に関連する神経メカニズムを明らかにすることである. 本年度は,嫌悪的状況下に置かれた他個体に対する援助行動を示しているラットの前部帯状皮質の神経活動,およびオキシトシン作用の操作が与える影響について検討した.具体的には,DREADDシステムを用いて,前部帯状皮質のニューロンを実験的に活性化させることによって,援助行動の獲得・表出にどのような影響が見られるのかについて検討した.アデノ随伴ウイルスベクターによって,ヒト・ムスカリン性アセチルコリン受容体M3(hM3Dq)を前部帯状皮質ニューロンに発現させたラットに対して,クロザピンNオキシドを腹腔内投与することによって前部帯状皮質ニューロンを興奮させる処置を行った.その結果,援助行動の学習を阻害する傾向が認められた. また,課題の実施前に,前部帯状皮質にオキシトシン受容体のアンタゴニストを投与することによって,援助行動にどのような影響がみられるかについて検討した.その結果,前部帯状皮質のオキシトシンの作用を阻害することで,援助行動の学習が阻害される傾向が認められた.しかし,いずれの実験についてもまだ事例数が少ないため,今後もデータを増やしていく必要があると考えている. さらに並行して,援助行動の獲得前,獲得中,獲得後のように,ぞれぞれの学習段階に応じて脳切片を作製し,ニューロンの活性化のマーカーであるc-fos遺伝子発現を免疫組織化学的染色を用いて検討した.これについては,現在データ分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の初年度は,研究代表者の研究室で開発した実験パラダイムを使用し,援助行動の獲得に関わる神経メカニズムについて,特に神経活動の操作と脳内物質の操作の影響を調べることを予定していた.まだデータ数は少なく,今後もデータを収集していく必要はあるが,おおむね当初の計画通りに進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き,データの収集を継続していく予定である.具体的には,c-fos等の神経活動のマーカーを使用して神経活動性の測定し,援助行動の獲得や表出に関連する脳の領域を特定する.そして,DREADDシステムを使用して神経活動を操作し,そのことによって援助行動がどのように影響されるのかについて検討する.並行して,オキシトシンアンタゴニストを投与することによって援助行動がどのように影響されるのかについて検討する.本年度は,前部帯状皮質を標的としたが,可能であれば,その他の脳領域についても,同様の実験手法を用いて検討していきたいと考えている.
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