研究実績の概要 |
テンポラルアソシエーションには内側嗅内皮質(MEC)のⅡ層のカルビンジン陽性ニューロン(CB+細胞)が関与することが報告されている(Kitamura et al., 2014)。本研究の目的は、外側嗅内皮質(LEC)のⅡb層(これまではⅢa層と表記)CB+細胞が形成する回路構造、及びテンポラルアソシエーションにおける機能を明らかにすることである。 これまでの研究で、MECとLECのCB+細胞が異なる投射先を持つニューロンから構成されていることが逆行性トレーシング法を用いてわかってきた(日本神経科学大会 2016, P3-201)。最も大きな割合を占めるのが領域内に投射を送るニューロンで、約50%のCB+細胞が局所回路を構成している。残りは海馬または皮質領域に出力するニューロンで、その割合はMECとLECで異なる。海馬への投射はLEC(10%以下)よりMEC(約20%)の方が多い一方、LECのCB+細胞(20-30%)は皮質領域(内側前頭前野と扁桃体)へ出力する。また、順行性トレーサーを用いた実験から、LECのCB+細胞がCA1の網状層、及び嗅内皮質表層に投射することが示唆された(北米神経科学大会 2016, 84.13)。さらに詳細にCB+細胞の入出力関係、及びその機能を調べるため、CB+細胞への遺伝子導入法の確立も試みた。これまでに2種類のアデノ随伴性ウイルスベクターとCre-loxPシステムによる『標的神経回路への選択的遺伝子導入法』を用いることでCB+細胞に目的遺伝子を導入することに成功した。 また、上述したCB+細胞以外にも、LECの深層ニューロンが形成する局所回路に着目し、Ctip2陽性細胞が分布するⅤb層がⅤa層を介して皮質領域に投射を送ること、Ⅱa/Ⅲ層を介して海馬へと入力することを明らかにした(日本神経科学大会 2016, LBA3-023)。
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