研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
16H01500
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野村 洋 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (10549603)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 神経科学 |
研究実績の概要 |
記憶は生物の行動を制御する重要な脳機能である。ある現在の出来事を経験すると、脳内に記憶痕跡として蓄積され、その後の未来の行動に影響を与える。また、現在の出来事に関する記憶形成は、過去の記憶の影響を受ける。こうして過去の出来事は、現在の出来事に関する記憶形成に影響を与え、それらが結びついて未来の行動は制御される。このような関連学習に関する行動学的研究は存在するが、その神経回路についての研究は乏しい。特に、事前の経験とその後の記憶形成を統合する神経回路に関する研究はほとんど行われていない。本研究の目的は、2つの刺激の連合学習を司る神経回路メカニズムを解明することである。音と報酬の条件づけを用いた学習課題を行った。報酬として水あるいはスクロース水を使用した。マウスに対して事前に報酬になれさせてから学習課題を行った。4秒間の音を与え始めてから0.5秒後にマウスに対して報酬を与えた。この条件づけを繰り返すと、マウスは音を聞いただけで舌を出す(Licking)ようになった。このLickingは報酬を与える前から観察された。このことは、音と報酬の条件づけが成立したことを表している。この時の神経活動を測定するために、カルシウムイメージング法を用いた。アデノ随伴ウイルスを用いてカルシウムセンサーGCaMP6を導入した。GCaMP6の蛍光強度変化を指標として神経活動を測定した。複数の細胞で蛍光強度の上昇が観察された。これらの技術を組み合わせることで、連合学習を司る神経回路メカニズムの解明が進むと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにカルシウムイメージング法を用いて神経活動の測定を行った。GCaMP6の蛍光強度変化を1細胞単位で取得することに成功した。また、学習に関わる神経回路を解明するにあたって必要な学習課題の確立にも取り組んだ。これらの技術を組み合わせることで連合学習を司る神経回路メカニズムの解明に寄与できると考えられる。以上の理由から、本研究課題は概ね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
マウスに感覚刺激を与えた時、連合学習が起こった時、連合記憶を想起した時の神経活動をカルシウムイメージング法によって測定し、記憶の神経回路基盤を明らかにする。カルシウムイメージング法を用いた場合、長時間の動画を解析して各ニューロンの蛍光強度変化を抽出する。この抽出方法を確立する。また各ニューロンの蛍光強度変化から、活動イベントを抽出し、多ニューロンの活動パターンを元にして行動と有意に相関する活動を抽出する。
|