研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
16H01501
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲史 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (90334812)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 聴覚 / こだま定位 / 脳内情報表現 / 時間地図 |
研究実績の概要 |
実験1:FM コウモリ下丘の時間遅延処理回路の同定/アブラコウモリ7例を使用した。下丘低周波領域か、高周波領域の何れかにガラス電極を刺入し、電気泳動的にfluorogold (FG)を微量注入した。灌流固定後免疫染色を行い、FG標識されたニューロンが大型抑制性、小型抑制性、興奮性細胞の何れかを判定した。すると、下丘内において、注入部位とは異なる周波数領域では標識された小型抑制性細胞の割合が低下する一方、標識された大型抑制性細胞の割合は上昇することがわかった。このことは、大型抑制性細胞がスウィープ音のような複雑な周波数構成の音を統合して応答するのに適していることを示唆している。 実験2:内部時間指標を符号化する細胞種の同定と内部時間指標の地図表現の解明/実験2-1:機能イメージングによる下丘局所神経回路での時間情報表現の解明/脳の機能地図の形態学的基盤を明らかにする技法を開発すべく、下丘スライスに色素を詰めた電極を刺し、電位イメージングを行いながら軸索の標識を行なった。すると、神経活動伝搬様式と標識軸索終末の空間分布につよい相関が見られた。現在論文投稿中である。 実験2-2:下丘単一細胞の音時間情報処理能力と形態学的特徴との関連の解明/今年度は65例のラット下丘中心核ニューロンについて、細胞種、樹状突起形態、入力終末の空間分布と音刺激に対する応答性の関連について検討した。コウモリの実験で示唆された、大型抑制性細胞のスウィープ音に対する選好性が確認された。この選好性がどのような形態学的パラメータと相関が強いのか解析したところ、樹状突起の展開も重要ではあるが、最も強い要因は興奮性や抑制性の入力終末の密度であることが判明した。コウモリの大型抑制性細胞上の終末密度は周波数領域によって異なることから、コウモリの大型抑制性細胞のスウィープ音応答性は周波数領域によって異なることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は大学のカリキュラムの変更に伴い教育業務が通常の2倍(6ヶ月)となった上、1月に研究代表者の移籍が決まったため、予定していた実験の多くが実施できなかった。なお、過去に行った実験の解析については予定通り実施し、それをもとに領域会議で新知見を報告できたことから、「やや遅れている」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
4月から研究代表者の所属が変更になったので、まずは実験環境整備を行う。実験2-2を行うのに必要な実験室が存在しないので、間接経費ないし教室費を利用して実験室の整備を行う。 実験2-1で用いるイメージング設備は共同研究先の金沢医科大学生理学I講座に設置し、研究代表者がそこで実験する手はずとなっており、連携研究者の村瀬博士に5月に設営をお願いする段取りである。4~6月に研究代表者は教育業務が重いので、この時期に実験環境整備を完了させることで、29年度の研究を円滑に開始できると考えている。
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備考 |
日本解剖学会 神経解剖懇話会で世話人を務め、研究分野の活性化を図った。 発表論文2件は何れも研究代表者がco-1st authorである。
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