公募研究
発達性協調運動障害とは、協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習および使用の機会に応じて期待されるものよりも明らかに劣っていることで診断される神経発達障害である(DSM-5, 2013)。発達性協調運動障害児は、自閉スペクトラム症と深く関連した神経発達障害であり、達性協調運動障害児、自閉スペクトラム症児ともに運動スキルと社会スキルが低い(Sumner, Leonard, & Hill, 2016)。発達性協調運動障害を持つ人は、タッピング課題などを用いた時間生成課題が、定型発達者よりも不正確である(Hill & Wing, 1999)。自閉スペクトラム症者は、定型発達者と比較して時間再認課題の成績が悪く(Martin, Poirier, & Bowler, 2010; Lind et al., 2014)、定型発達者と自閉スペクトラム症者のペアは、相互タッピングが困難である(Kawasaki et al., under review)。これらの非定型的な時間知覚が、社会性の問題や他者に対する共感と関連している可能性が考えられる。本研究の結果から、発達性協調運動障害の成人は時間生成が不正確であるという予測は部分的に支持され、時間知覚が不正確なのは、発達性協調運動障害そのものの症状ではなく、併存する自閉スペクトラムの症状によって時間生成が不正確になることが明らかになった。運動巧緻性の低さが、時間生成の不正確と関連するという予測は支持された。共感性の低さが、時間生成の不正確と関連すると予測するという予測は部分的に支持され、共感の中でも特に情動的共感の低さが時間生成の不正確と関連することが明らかになった。認知的共感ではなく情動的共感が時間生成の困難を説明したということは、高次の認知レベルよりも、身体感覚のレベルで時間が表象されていると考えられる。今後は、身体感覚の神経基盤である島皮質による時間知覚生成メカニズムの機能を検討する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
当初は募集が難しいと考えられていた発達性協調運動障害を持つ方々のデータを予定通り集めることができたので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
今年度は、第一に、物語における時間情報の順行と逆行を参加者はどのようにモニターしているのかを明らかにする。物語の時間は、現実時間の流れに沿って進むわけではなく、ときに逆行をすることがある。物語内の時間の進行に応じた脳の活動部位およびネットワークを解明する。第二に、時間生成課題を用いて、主観的時間評価を行っている際の神経活動を明らかにする。生成された時間の正確性が、時間経過を含む文の読解時間を予測すると考える。さらに、時間生成は、読者の身体的基盤、すなわち身体内の臓器や生理状態についての感覚である内受容感覚によって生じていると予測する。今年度が最終年度であるので、得られた成果を論文として発表する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件)
NeuroImage
巻: 139 ページ: 114-126
http://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2016.05.061
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 37875
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