研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
16H01514
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
梅田 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90317272)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 未来思考性 / 不安 / うつ病 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトの目的は,未来性に関わる課題遂行中の脳活動および自律神経活動の測定を通して,「心・脳・身体」という三者関係から,不安障害や抑うつ障害と関係の深い未来思考性について検討することである.初年度である平成28年度は「心の未来性」のメカニズムにおける「心・脳・身体」のダイナミクスの理解を目指し,未来・過去方向への自動思考性の背後にある機構の理解を深めることを目的とした実験を実施した.主要な実験課題では,文章の刺激を用いてポジティブあるいはネガティブ方向への自動思考性を引き出すような状況を作り,未来思考性と過去思考性における処理をターゲットとして,中枢神経活動の指標として脳波計を,自律神経活動の指標として心電図を用いることで,三者関係についての深い検討を行った.その結果,未来に思いを馳せる瞬間の活動に関連するコンポーネントを取り出すことに成功し,それが精神疾患の傾向性とも関連があること,またその脳活動が身体由来であることなどを心拍誘導電位のデータ解析方法を用いて明らかにすることができた.これまでの研究では,刺激に接した初期の成分でこのような結果が得られることは想定されていなかったため,潜在的な処理を示唆する重要な結果であると位置づけられる.本研究の成果は心の時間的な側面に関する基礎的な知見であると同時に,臨床的な意味合いも多く含んでいる.次年度における課題遂行につながるものであり,本研究の成果を裏付けるような,さまざまな方法論を用いた研究を発展的に実施し,本研究の信頼性を高める方向で今後の研究を推進させる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに遂行している.一部については当初の想定よりも結果が明確に示されたため,追加的な実験および解析を施行している状況である.次年度の計画に十分つながるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況でも示した通り,初年度の成果として,想定以上に明確な結果が得られたため,それを裏づける臨床研究を実施する予定で進めている.既に研究倫理申請の承諾も得られており,計画通りに実施できる予定である.また多くの成果が得られるように,今年度も柔軟な計画の見直し,およびそれに伴う実験の遂行を実施する.
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