公募研究
本研究は、マクロ/ミクロな主観的現在についての神経基盤を明らかにすることを目的に、実験的手法と後方視的な症例検討を行ったが、今年度は実験的な検討を主として行い、マクロな主観的現在としては、時間的展望課題、時間評価(1分計測)課題、ペーシング課題、ミクロな主観的現在としては、視覚刺激と聴覚刺激に対するタッピング課題を行った。対象者は前頭葉領域、頭頂葉領域、小脳領域に脳腫瘍がある患者と年齢を一致させた対照被験者であり、腫瘍摘出術の前後(対照群は期間のみ一致させた)に実施した。時間的展望課題としてはサークル・テストを用い、過去・現在・未来として描かれたそれぞれの円の相対的な大きさを指標とした。結果、領域の主効果(頭頂葉>前頭葉、対照群)と時間の主効果(過去/現在>未来/現在)を認め、頭頂葉損傷患者は、過去を重視することが示された。時間評価課題では、領域の主効果(前頭葉<コントロール)と手術の主効果(術前<術後)を認め、時間評価には前頭葉が重要と考えられた。ペーシング課題では、領域の主効果(前頭葉、頭頂葉>コントロール)と領域と手術前後の交互作用(頭頂葉)が認められたことから、前頭葉の時間評価の機能が保たれることによって、ペーシングで必要とされる能力が改善すると考えられた。タッピング課題では、手術とモダリティの交互作用(術後に視覚で低下)を認め、脳の損傷によって視覚同期のメカニズムが影響を受けやすいことが明らかとなった。以上のように、マクロな主観的現在は前頭葉と頭頂葉のネットワークによって実現されることが示唆されたが、ミクロな主観的現在はモダリティごとに差が生じることが示されたが、特定の領域を見いだすには至っていない。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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