研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
16H01524
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
羽倉 信宏 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (80505983)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時間知覚 / 同時性判断 / 運動準備 |
研究実績の概要 |
身体運動と時間知覚の関係を調査するために、本年度は運動の開始タイミングが実際の開始タイミングとどのような関係にあるのかを調査した。課題では、モニター上に準備刺激が提示され、その後、左右いずれかの方向を指し示す矢印(運動開始刺激)が提示された。被験者は、矢印が右向きの場合は右手の小指で、左向きの場合は右手の親指でボタン押しを行った。被験者の運動準備状態を操作するために、運動準備刺激が運動開始刺激の方向と一致する場合(運動準備あり)と、両方を左右両方を指し示す場合(運動準備なし)が用意された。運動開始刺激の前後には、フラッシュ刺激が提示され、被験者はボタン押し後、フラッシュと自分の運動のタイミングが同時だったか否か(同時性判断)を行った。統制条件として、同じ課題を行うが、小指、もしくは親指の運動の代わりに、ソレノイド電極で小指、もしくは親指に触覚刺激を与えられ、フラッシュと触覚刺激の間の同時性判断を行った。結果、運動実行前に行うべき運動がわかっている場合のみ(運動準備あり)、運動開始タイミングの知覚が、実際の物理タイミングよりも先行して知覚されることが分かった。このようなタイミング知覚の変化は、運動課題と同様に「どの指に触覚刺激が与えられるか」が事前にわかっている場合には生じなかった。これは、この現象は、外部から与えられる感覚情報の予測によって生じるのではなく、運動特異的な予測システムによるものであることを指し示す。よって、運動準備は、運動実行タイミングの知覚を実際よりも先行させることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、身体運動と時間知覚がどのように関係するのかを調査する。現在まで、運動準備がどのように自分自身の運動についての知覚を変容させるのかの条件が明らかになっていることから、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
外部から入力される感覚情報のタイミング知覚について、これまで「タイミングの分布」がどのように時間知覚に影響を与えるのかについての研究は行われてきているが、その分布がダイナミックに変化するときに、その変化に対し、脳がどのように適応していくのか、についての研究はあまりなされていない。運動学習では、環境の変化に応じて、学習がどのように頑健になっていくのかについての現象が多く報告されている。そのメカニズムの知見がタイミング知覚についても成立するのかについて、調査する。
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