公募研究
ラマン分光イメージングが張る高次元特徴空間におけるファジー分類と細胞病理応用:1細胞ラマンスペクトルから細胞状態(癌/非癌)を分類するアルゴリムを開発した。ラマンスペクトル分布関数間の距離に相当するKantorovich測度を用いて、スペクトルの全情報を反映したスペクトル分布関数間の距離空間を定義した。さらに、計測誤差、有限サンプルに由来する数揺らぎ誤差を評価しつつ、誤差を考慮するファジークラスタリングに基づいて状態数を同定し、各スペクトルがどの細胞状態(クラスター)に属するかの確からしさ(確率)を評価した。クラスターの数やクラスター内のスペクトル類似度の制約の強さは、スペクトルデータの計測誤差、有限サイズサンプリングに由来する数揺らぎによって、与えられたデータ毎に自動的に決定する。細胞、細胞核の形状だけでは診断が困難とされる甲状腺濾胞癌がラマン分光画像に基づいて、精度よく分類されることなどを見いだすことに成功した。植物の多様な細胞成長から導く正確な器官成長の制御:隣り合う植物細胞は全体的なパターンとは異なる仕方で成長および分裂をする一方、マクロな器官自体は正しいサイズに到達することが知られるが、その機構はわかっていない。我々はモデルシステムとしてシロイヌナズナの野生型および変異型(膜たんぱく質プロテアーゼのひとつであるFtsH4たんぱく質に変異導入)の萼片を調べ、細胞の成長率などの時空間多様性と時間平均化が正しいサイズに到達する上で必要であることを導いた。萼片の弾性体モデルを構築し、成長時のランダム性の時空間平均化が正常な器官を形成するうえで重要であることを示することを示した。実際、変異体は時空間平均化において欠陥がある一方、野生型の萼片はノイズの多い細胞成長の時空間平均化を経ており、それらを定量的な成長解析を用いて検証し、仮説を支持する結果を導出した。
1: 当初の計画以上に進展している
ラマン分光イメージングによる細胞状態の同定に関する研究成果は科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業「計測技術と高度情報処理の融合による インテリジェント計測・解析手法の開発と応用」の研究代表者の選出に繋がった。また、シロイヌナズナの萼片の細胞レベルのランダム性と組織レベルの構造の均一性に関する研究は、Dev Cellに掲載されて、表紙カバーにも選出された。
細胞状態を診断するための特徴量および周波数帯(の離散集合)を抽出し、オルガネラ単位、周波数域による識別能の差異を定量化するlookup表を作成し、そのスパース性を定量化するとともにスパース学習およびバンディット手法による識別規則を検討する。スパースモデリングおよびラマンスペクトルからラット脂肪性肝疾患の細胞状態がどの程度識別できるかを調べる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (4件)
生物物理
巻: 56 ページ: 197-197
10.2142/biophys.56.197
Developmental Cell
巻: 38 ページ: 15-32
10.1016/j.devcel.2016.06.016
Biophysical Journal
巻: 110 ページ: 1836-1844
10.1016/j.bpj.2016.03.011
http://www.ens-lyon.fr/en/variable-cell-growth-yields-reproducible-organ-development-through-spatiotemporal-averaging-316832.kjsp?RH=TEMP-INTER-EN
http://www.news.cornell.edu/stories/2016/07/flower-bud-uniformity-beholden-time-and-space
http://www.hokudai.ac.jp/news/160712_es_pr.pdf
http://www.es.hokudai.ac.jp/result/2016-07-26-mlns/