公募研究
2次元NMRシグナルの化学シフトや線幅の実験値と計算値の差異を指標としながら、マルコフ連鎖モンテカルロ法により、構造平衡モデルの交換速度や各状態の化学シフトの網羅的に探索して、最適値と誤差を算出する手法を開発した。最適値と誤差を算出する手法を開発した。開発した手法を適用して、b2アドレナリンの各リガンド結合状態におけるM82のNMRシグナルに基づく、二つの不活性型構造と一つの活性型構造の間の4種類の速度定数の解析を行った。その結果、従来のグリッドサーチと同様の交換速度および誤差が算出された。さらに、M215のNMRシグナルに基づく、二つの不活性型構造と二つの活性化構造の間の6種類の速度定数の解析を行った。その結果、実測したNMRシグナルの化学シフトを良く再現する速度定数が得られた。さらに、バイアスリガンド結合状態の構造平衡の解析を行った。最初に、新規合成リガンドのシグナル伝達活性化能の測定および新規リガンド結合状態のb2ARのNMRスペクトルの測定を行った。その結果、新規リガンドは、G蛋白質シグナルとアレスチンシグナルを両方活性化する、部分作動薬であることが明らかとなった。次に、アレスチンシグナルをより強く活性化することが報告されている、バイアスリガンドの一種が結合した状態における、メチオニン選択標識b2ARのNMRスペクトルを取得した。その結果、M82およびM215のシグナルが、通常のリガンド結合状態と比べてシフトすることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画にあった、マルコフ連鎖モンテカルロ法により、NMRシグナルから構造平衡の交換速度や誤差を推定する方法の開発、b2ARのNMRシグナルへの応用、およびバイアスリガンド結合状態のb2ARのNMRシグナルの観測を、予定通り達成することができたため。
アレスチンシグナルをより強く活性化することが知られている、もう一種類のバイアスリガンドが結合した状態のb2ARのNMRシグナルを観測する。バイアスリガンド結合状態のNMRシグナルに基づいて、今年度開発した手法を用いて、b2ARの構造平衡を明らかにする。さらに、開発した手法を、走温性を制御する蛋白質-蛋白質複合体CheA-CheYの構造平衡の解析などの、GPCR以外の系に応用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.
巻: 113 ページ: 4741-4746
10.10733/pnas.1600519113