研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
16H01533
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 岳彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (90242099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | TEM / TAP / 反応計測 / 金ナノ粒子 / 固定化イオン液体触媒 |
研究実績の概要 |
本課題では、TAP装置とTEMデータを基盤とする触媒研究について、これらの研究を進めるとともに、情報科学による解析手法を取り入れて、TEM画像の定量的解析、TAP測定による速度論パラメーターの決定を目指している。 我々のグループでは、固定化イオン液体触媒の開発に取り組んできている。メソポーラスシリカの中でも、安定性が高いことで知られているSBA15を調製し、そこに、1-メチルー3-トリメトキシシリルプロピルイミダゾリウムクロリドをトルエン中で還流することでイミダゾリウム基を固定化し、(カウンターアニオンは塩化物イオン)、ここに様々な金属塩化物を導入することで金属塩化物アニオンをカウンターアニオンとした固定化イオン液体触媒を調製できる。塩化金を用いて、AuClを含有する固定化イオン液体触媒を調製した後、水素化ホウ素ナトリウムで還元を行うことにより、金ナノ粒子が、メソ孔内に分散した状態を調製することができた。水素化ホウ素ナトリウム水溶液の濃度及び水素化ホウ素ナトリウム水溶液の供給速度をパラメーターとすることにより、金ナノ粒子の粒径分布を変化させることができた。また、このようにして調製した金ナノ粒子触媒について、p-ニトロフェノールをp-アミノフェノールに還元させる反応を行った。ここでも水素化ホウ素ナトリウム水溶液を還元剤として用いている。反応速度は擬一次反応で進行し、紫外可視分光光度計で反応速度を計測し、速度定数を求めた。この結果から、金ナノ粒子の粒径が最も小さい場合が反応速度が高くなることが見出された。これは2wt%の金原子のうち、表面に露出している割合が最も高いためであると解釈される。 これと並行して、TAP装置によるメタン部分酸化反応の計測と測定結果の解析、並びに、TEM画像解析について引き続き取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した内容については、学会発表を行うとともに、現在論文としても投稿している。更に、対象金属をパラジウム、ロジウム、銅などに広げた研究を展開しているところである。また、TAPデータ解析に関しては、数理科学を専門とする福島先生(東大)、大森先生(神戸大)の協力も得て、複数の素過程を含んだ触媒反応の速度論パラメーターを得るための方法論開発に取り組んでいる。また、TEMデータの解析に関しては、各画像をマニュアルで解析することを実践することの他に、画像データのバックグラウンド処理や重なった粒子を解析するためのプログラムも開発中である。
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今後の研究の推進方策 |
下記の方策により今後の研究を推進していく予定である。 (1)固定化イオン液体触媒を前駆体とする金属ナノ粒子触媒の開発については、今後は、パラジウム、ロジウム、銅、ニッケルなどについて、適用範囲を広げていく。更に、担体として、スポンジ型のメソポーラスマテリアルの開発を行い、これについてもイオン液体の組み込み、金属イオンの含有、還元による金属ナノ粒子触媒の開発を進めていく。 (2)TEM画像の粒径分布の自動計測にむけて、バックグラウンドノイズ除去、粒子の重なりへの対応、メソポーラス構造のチャンネルと粒子の重なりに関しての対応を進めていく。 (3)メタン部分酸化反応に関しては、アルミナ担持ルテニウム触媒に関して、温度依存データの集積を行ってきているが、メタン部分酸化反応、ドライリフォーミング反応、水蒸気改質が同時に進行している可能性が見出されている。反応系に関する偏微分方程式のシミュレーション実験データとの比較により各反応過程の速度論パラメーターの取得を進める。 (4)触媒開発に関してのマテリアルインフォマティクス手法の検討を行うために、合金触媒の電子状態、担体との相互作用に関して、密度汎関数法計算により諸パラメーターを求め、これらと反応の活性に関する相関を求め、触媒設計に重要なパラメーターを探索し、新規触媒系の開発に取り組む。
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