研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
16H01536
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長尾 大道 東京大学, 地震研究所, 准教授 (80435833)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | データ同化 / 疎性モデリング / lasso / 正則化 / モデル選択 / 非凸最適化 / 地震 |
研究実績の概要 |
数値シミュレーションモデルと観測・実験データをベイズ統計学の枠組みで統融合するデータ同化は,一般に極めて大きな計算コストを必要とする.近年の観測・計測の大規模化に伴い,大容量データを効率よく同化させることが課題となっているが,現在のデータ同化の枠組みでは,原則として毎時刻に全てのデータを参照するという,極めて非効率な計算が発生しているのが現状である. 本研究では,現在のデータ同化の枠組みに,有効なデータを選択するための疎性モデリングに基づくアルゴリズムを実装することにより,データ同化計算の大幅な高速化の実現を目指す.研究期間の2年間で,(A)データ同化計算の高速化に資する疎性モデリングに基づくデータ選択アルゴリズムの開発を遂行しつつ,(B)データ選択に伴うデータ同化結果への影響の検証,および(C)新規アルゴリズムを導入したデータ同化手法の実問題への実装という,3つの課題に取り組む. 平成28年度は,課題(A)として,研究代表者の監修および連携研究者の助言の下,研究代表者の研究室に在籍する大学院生が,地球統計学的手法であるクリギング法と,疎性モデリングや非凸関数最適化手法を実装することにより,データ選択アルゴリズムの開発およびデータ同化テストコードの作成に着手した.また,課題(B)の一部として,擬似データへの適用を通じて,開発手法の検証を実施した.また,これらの研究成果を,領域会議ならびに日本地球惑星連合大会と統計関連学会連合大会において発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初計画では,平成28年度はL1正則化(lasso)に基づく観測点選択アルゴリズムの開発のみが目標であったが,実際にはそれだけに留まらず,L2-L1正則化やDC計画法に基づく非凸最適化に至るまでの様々なアルゴリズムを,クリギング法と融合させることに成功し,課題(A)のうち,アルゴリズム開発に関する部分をほぼ完了した.ただし,OpenMPに基づく並列化に関しては完了に至らず,平成29年度に先送りとなった.また,平成29年度に実施予定であった課題(B)の開発手法の検証実験の一部を前倒しで実施することができた.また,領域会議ならびに国内の学会における成果発表も予定通り行った. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,まずは平成28年度に引き続き,(B)データ選択に伴うデータ同化結果への影響の検証を行う.平成28年度に開発したテストコードを東大地震研のスパコンに投入することによって主に計算時間を計測し,特に正則化パラメータの値が選択されるデータ点および得られる結果へどのように影響するかについて,連携研究者からの助言を受けながら,慎重に吟味する.また(C)新規アルゴリズムを導入したデータ同化手法の実問題への実装に取り組む.具体的には,開発手法の地震動イメージング法やフェーズフィールド法への実装に取り組む.前者については,実際の地震データを用いることにより,データ選択による効果について検証する.また後者については,マルテンサイト組織における相変態をターゲットとし,実在の構造材料組織のパラメータならびに内部状態の推定問題への適用を試みる. 得られた研究成果は,領域会議のほか,日本地球惑星科学連合大会や統計関連学会連合大会等の国内学会,あるいは米国物理学連合秋季大会や米国物理学会等の国際学会において発表するとともに,論文としてまとめ,国際誌に投稿する.
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