研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
16H01539
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青西 亨 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (00333352)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自動細胞検出 / 制限ボルツマン・マシン / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
神経科学の分野において、カルシウムイメージングは多細胞の活動を同時記録する重要な手法の一つである。近年、二光子顕微鏡などの計測装置の急激な発展により、広視野から数十万個の細胞活動を計測することが可能となった。このような計測装置の急速な進歩により、我々は巨大なデータをいかに解析するかという問題に直面するようになった。近年、このような大規模カルシウムイメージングデータから、機械学習の方法を用いて細胞活動を自動検出する試みがある。近年発表された、静的な形態情報でなく、動的な情報から細胞検出を行う手法は、その多くが非負値行列因子分解に基づいている。 非負値行列因子分解では、処理対象のイメージングデータを2次元行列上に展開し、これを空間要素行列Wと時間要素行列Hへ分解している。したがって、イメージングデータの全フレームをメモリ上に同時に展開しなければならないため、数値計算に大量のメモリが必要である。これがNMFの最大の問題であり、大規模なデータを取り扱う際の制約となる。続々と発表されている新型広視野顕微鏡で取得される巨大イメージングデータに対応するため、NMFと異なる新たな解析法の開発が望まれる。 このような研究ニーズを背景に、我々は制限ボルツマン・マシン(Restricted Boltzmann Machine, RBM)による細胞検出手法の開発を行った。我々は、非負値行列因子分解で取り扱っていた細胞検出問題をRBMで再定式化し、Contractive Divergence (CD)学習による細胞検出アルゴリズムを構築した。具体的には、非負型RBMである「Gamma-multi-Bernoulliモデル」を導入した。独立なBernoulli過程に従う2値素子のレプリカで観測層を構成し、ガンマ分布に従う素子で潜在層を構成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GPUへの実装が想定していたより難航しているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、非負型RBMを細胞検出器として機能させるため、スプレッド関数を導入した。細胞検出問題の多くの事例では、細胞体の検出が重要である。細胞体は局所的な楕円状の形状であるので、層間結合Wは空間的に局所的な範囲だけに分布すればよい。このような結合の空間的広がりの制約を設けるがスプレッド関数である。CD1学習の更新則において、結合Wの更新の度にスプレッド関数でフィルタリングすることによって、結合の空間的広がりを制約した。人工合成データを用いて、スプレッド関数の導入により性能が向上することが確認できた。 平成28年度より本手法のGPUへの実装を試みており、平成29年度も引き続き本手法のGPUへの実装を行う。そして、実装が完了次第、実データを用いて本手法の性能を評価する予定である。層間結合Wが疎な行列となるため、メモリや計算量を大幅に削減できることが期待される。また、スプレッド関数の導入により、学習において空間的に局所的な情報のみを取り扱うことになるため、データの大規模化による検出性能の低下が起こらないことが期待される。
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