研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
16H01544
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
巽 一厳 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (00372532)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 走査透過型電子顕微鏡 / 電子線エネルギー損失分光 / 電子磁気円二色性信号 / テンソル分解 |
研究実績の概要 |
本研究は,走査透過電子顕微鏡(STEM)に付随したEELSおよびEDXにおける大規模スペクトルデータから化学状態に関する情報(スペクトル,空間分布)を統計的に抽出する手法の開発を行う.これまでに適用してきた2次元行列の分解を高次元行列(例えば試料面(x,y), エネルギー軸(E)の3次元行列)のテンソル分解に発展させることを主眼に置いている. 本年度においては,近年理論的に測定法が考案された原子面ごとの磁気円2色性信号を含む高分解能STEM-EELSデータに関して,テンソル分解を行い,磁性信号とその空間分布を抽出した.実験データは,bcc-鉄の単結晶領域において収差補正STEMで測定されたEELSである.原子面に垂直な方向に長い長方形型の領域で得られたもので,原子面に垂直な空間ドリフトを抑えるためにこの形状が採用された.テンソル分解の1つであるCPD(正規多元分解)を実験データに施したうえで,EMCDを差スペクトルとして取り出す手続きを行ったところ,CPDを施さない場合にくらべ,EMCDライクな差スペクトルが現れる頻度が向上した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の研究グループと共同することで,テンソル分解およびノイズ除去の手法を組み合わせ,主要な目的である微弱スペクトル信号の抽出が一例ではあるが実験データでうまく行われたため.
|
今後の研究の推進方策 |
データの素性が比較的予測されているものに対して,妥当な分解結果が得られている.より正解についての知見が乏しい場合に,誤った解を導くことも懸念される.STEM-EELS(またはEDX)データの一般的なデータで適用する処方箋を作ることが今後の課題である.
|