公募研究
本課題では、蛍光X線ホログラフィーの測定結果の解析について、これまで一般的に行われてきたフーリエ変換による順問題ではなく、原子配列を仮定する逆問題を導入する。ほとんどの位置に原子が存在しないスパース性を考慮して、物理的に正しく精緻な原子像を再現することを目指している。平成28年度にはまず、スパースモデリングを用いた解析の手法についてJSPS外国人特別研究員と共に、計画班、他の公募班あるいは共同研究者から深く学修し、それを蛍光X線ホログラフィーのデータの解析に用いるための詳しい検討を行った。既存のコンピュータプログラムを詳しく精査しながら、改良を進め、まず一例として、トポロジカル絶縁体として知られる、Mnを添加したBi2Te3の不純物のまわりの局所構造を探求する実験結果の解析に適用した。その結果、フーリエ変換では得られなかった原子像を明白に見い出すことができ、これまではっきりとはわからなかった不純物の位置が原子層の間の特殊な位置に選択的に存在しているだけではなく、別の位置にも置換型で存在し、まわりの原子位置に歪みを与えているという明確な回答を出すことができた。この結果は、現在物理分野で権威のある雑誌Physical Review Bに論文として投稿した。今後は同様な解析を測定の終わっている他の系、例えばFe系高温超伝導体、DVDなどの光誘起相変化材料、熱電材料、準結晶などにも適用し、弱かった原子イメージの再構築、位置分解能の飛躍的な改良あるいは位置ゆらぎの定量的な導出に取り組む。
1: 当初の計画以上に進展している
スパースモデリングは新規に取り組んだ解析手法であったが、計画研究班、他の公募研究者あるいは共同研究者やの多大な協力などにより、既に論文投稿のレベルまで到達したことは望外の進展である。研究協力者に感謝申し上げたい。
平成29年度は、逆問題の手法の一つである逆モンテカルロ法の世界的な権威である、ハンガリー科学院の研究者を熊本大学に招聘し、4ヶ月間滞在いただけることになった。この機会を捉えてスパースモデリングの高度化をさまざまな物質系、例えばFe系高温超伝導体、DVDなどの光誘起相変化材料、熱電材料、準結晶などのさまざまな機能性物質の局在3次元原子配列の解明に取り組むとともに、他の公募研究者とともに熊本大学をデータ駆動科学の拠点となるような成果を出していきたいと考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 9件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Materials Transaction
巻: 58 ページ: 539-542
10.2320/matertrans.M2016459
Physica Status Solidi C
巻: 14 ページ: 1600171-1-4
10.1002/pssc.201600171
Acta Materialia
巻: 131 ページ: 534-542
10.1016/j.actamat.2017.03.048
Physical Review B
巻: 93 ページ: 245117-1-13
10.1103/PhysRevB.93.245117
http://crocus.sci.kumamoto-u.ac.jp/physics/SR/index.html