研究実績の概要 |
本研究では、制御対象システムの観測データのみを用いて制御するデータ駆動制御に対して、スパースモデリングのアプローチにより新しい制御手法を導出することが目的である。本年度は、非線形システムに対応する新しい手法を導出した。 本研究では、入力信号を未知信号と扱い、過去の観測信号を用いて所望の出力を得るための入力信号を修復することにより、制御を実現する。対象が線形システムの場合には、入出力信号から生成されるHankel行列が低ランクとなるように信号修復することで実現できる。非線形の場合には、低ランクHankel行列の修復問題が非線形行列完成問題となるため、そのまま利用することができない。そこで本研究では、機械学習分野の多様体学習で利用される局所線形埋め込み(Locally Linear Embedding, LLE)法を参考にした局所低ランク行列アプローチを導出した。LLEは観測信号の近傍では局所的に線形性が成り立つことを仮定した手法である。同様に、観測信号が、近傍では線形部分空間に属すると仮定して、非線形部分空間(多様体)上の信号修復を実現する手法を提案した。具体的には、修復対象とする行列の一つの行ベクトルに注目したとき、その近傍となる他の行ベクトルを抽出し、新たな行列を作成し、この行列が低ランクとなるように修復する手法である。全ての行ベクトルについて行列を生成し、低ランク行列を求める必要があるが、極めて高い精度で多様体上の信号が修復可能となる。 本研究では、同手法をドローンの出力予測にも応用し、正しく出力が予測できていることを示した。これは、どう手法に基づく予測制御が可能であることを示すものである。
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