本年度の研究により、超解像イメージングPALMの高速化と自動化に成功した。超解像イメージングの高速化においては、昨年度開発したスパースモデリングによるデコンボリューションのアルゴリズムの見直しと並列化することにより、1画像あたり数十秒かかっていた処理を数百ミリ秒まで高速化することに成功した。速度はCPUの数に比例するので、必要ならばCPUを増やすことでさらなる高速化を実現できる。この手法により、分子密度が密な画像であっても高速に解析ができるようになった。また、超解像イメージングの撮影をリアルタイム制御することでの高速化も行なった。通常は変換光を一定にして、超解像イメージングを行う。しかし、変換光の光強度を一定にしておくと、時間と共に観察される分子密度が低下し、データ取得効率が低下する。そこで、変換光の光強度を制御し、常に観察される分子密度が一定になるようにした。これにより、これまで数十分かかっていた作業を数十秒へ高速化することができた。上記の技術と昨年度までに開発してきた自動イメージング技術とを組み合わせて、自動で超解像イメージングPALMを行い解析することに成功した。応用として、CHO細胞に発現しているEGFR-mkikGRの細胞膜での密度を自動計測した。その結果、EGFを加えるとEGFRのクラスター化が促進され、そのEC50が約6nM付近であることがわかった。この結果は、別の計測での結果と一致しているので、我々の手法が正しく機能していることがわかる。さらに、発現量とクラスター化との関係を見ていくと、EGFがない状態でもEGFRはクラスターを形成しており、クラスターの度合いはEGFRの発現量に対し増加関数であることがわかった。本技術は今後、細胞内分子の配置を容易に解析できるツールになると期待される。
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