公募研究
我々生体内の機能分子の主役は様々な種類のタンパク質であるため、薬はタンパク質に結合してその機能を調整することで働くものが多い。創薬には、タンパク質構造を解明して、薬との結合ポケットの形を決定することが重要なステップの一つである。タンパク質構造決定で最も一般的な方法は、X線結晶解析である。しかし、創薬ターゲットタンパク質の結晶作製は一般に難しい。近年、結晶なしに様々な向きの電顕像から構造決定する単粒子解析法が進歩し、原子分解能に到達した。しかし、分解能が低いことも多い。理由は、タンパク質粒子の柔らかさと向きの偏りである。ここでは、向きの偏りを、負染色法の条件を検討することでし、また疎な投影角度が多い問題は本領域内の情報学グループと協力することでスパースモデリング(SpM)を応用した画像処理法開発を進めている。負染色での向きの偏りは、カーボン膜の電荷を調整することで改善した。負染色法を用い、構造未知なタンパク質の構造決定に関して、北大グループと共同しタンパク精製条件を開発しながら、免疫機構に重要な、HLA/MHCの特殊型の初めての構造決定に成功しJournal of Immunology誌に発表した。また、巨大な複合体形成の観察のために、免疫電顕のための抗体ラベル法開発として、病院内感染菌MRSAと神経初代培養細胞をラベルできる条件を決定して、それぞれをScientific reports誌に2報発表した。また、さらなる高分解能に向けて、クライオ電顕自体の開発としては、電子線検出で最高感度を有する電子線直接検出カメラのインストールにも成功し、金粒子を標準サンプルとして原子が明解に見える高い分解能の像を得ることに成功した。領域内で本プロジェクトに興味があるグループにも提供してSpMを応用して解析法開発を進めている。
2: おおむね順調に進展している
負染色法を用いて、構造未知なタンパク質の構造決定に関して、北大グループと共同してタンパク質の精製条件を開発しながら、免疫機構に重要な、HLA/MHCの特殊型の初めての構造決定に成功しJournal of Immunology誌に発表した。また、巨大な複合体形成の観察のために、免疫電顕のための抗体ラベル法開発として、病院内感染菌MRSAと神経初代培養細胞をラベルできる条件を決定して、それぞれをScientific report誌に2報発表したため。また、クライオ電顕自体の開発としては、電子線検出で最高感度を有する電子線直接検出カメラの電顕へのインストールにも成功し、金粒子を標準サンプルとして原子が明解に見える高い分解能の像を得ることに成功したため。さらに、タンパク質のクライオ電顕像を領域内で本プロジェクトに興味があるグループにも提供してSpMを応用した解析法開発を共同で進めているため。
単粒子解析法では、一度ターゲットタンパク質の構造が決まれば、薬の結合構造の決定も比較的容易であり、薬結合ポケットの解明は創薬の方向性を示唆する。薬改良にも大きく貢献する。しかし、これまでの解析で原子分解能に到達したのは分子中の一部分であり、全く届かないことも多い。理由は、タンパク質粒子自体の持つ柔らかさと粒子の向きの偏りである。そのため、分解能向上の要点は、揺らいでいる構造から、Major構造の投影像のみを選びだす分類・3次元再構成等の画像解析法の改良と向きの偏りを補正することにある。そのため、さらなる分解能向上を目指して、Cs補正エネルギーフィルター付200kV He stage極低温電子顕微鏡に最高感度の電子線直接検出カメラを組み合わせることでモデルタンパク質を撮影し最適化する。さらに、これまでの開発を基に、SpMの導入と階層化による更なる改良を試みる。また、分類の特徴空間の次元を、SpMによって必須なもののみに絞り込む。2次元平均化は粒子の向きが特定の角度に偏っている傾向を逆手に取って重ね合わせしS/N比を向上する手法であり、逆にその間は疎である。そのため、本テーマとSpMを組み合わせて、領域内のグループと協力してアルゴリズム開発を行う。また、これらの手法を組み合わせて生理的に重要な新規タンパク質のさらなる構造解析を行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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