2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)の余効すべり分布、特にすべり域と固着域との境界の位置をより詳細に、例えば20km程度の空間分解能で把握するため、スパースモデリングの一種である既存の数理モデルgeneralized fused lasso(一般化結合正則化)を、地殻変動観測データに適用した。同手法を用いて豊後水道での長期的スロースリップイベントのすべり域を解析したところ、すべり域の境界ではすべり量が急変することが明らかになった。このときは、Leave-one-out cross validationによる予測誤差が最小となるハイパーパラメタを用いて得られた解を最適解としていた。しかし、豊後水道長期的スロースリップイベントの解析対象領域に比べて、東北地震の余効すべりでは千葉県沖から青森県沖にかけての広範囲を解析する必要がある。そのため、要素数は約2倍、観測データ数は約4倍になり、問題規模が大きすぎて、計算にかなりの時間を要した。そこで、近似的にハイパーパラメタ探索を行う方法を用いた数値実験を行った。具体的には、近似手法の一種であるLassoのLeave-one-out cross validation誤差の半解析解を用いた数値実験を行い、このアルゴリズムの妥当性を確認した。その結果をもとに解像度を調べたところ、陸寄りの地域では元のすべり分布を再現できるが、沖合(浅部)でのすべりには解像度がなくなることがわかった。さらに、実データには、水平または上下動成分しかデータが存在しない海域観測点も含まれるので、海域観測点の欠測成分をどのように扱うか検討が必要であることが分かった。
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