公募研究
癌の悪性化には「細胞文脈」や「進化・多様性」が重要な役割を果たす。申請者は、腫瘍微小環境が癌の悪性化に関与することを報告してきた。本研究は癌の「細胞文脈」や「進化・多様性」を規定する腫瘍微小環境のエピゲノム、トランスクリプトーム、メタボローム、リピドーム、リン酸化プロテオームというオミクス解析を統合する数理システムを構築し、さらに、分子生物学的実験で検証することにより、癌悪性化・治療抵抗性の統合的な理解と克服を目的とし解析を行った。本年度の研究成果として、(1)腫瘍微小環境における低酸素・低栄養・低pHという「細胞文脈」において、mRNA-Seq 、ChIP-seqを行いアクティブ領域(H3K4me3)、サイレント領域(H3K27me3)や、オープンクロマチン領域(Faire-Seq)などを特定し、低酸素・低栄養・低pHで重要なエピゲノム変化と各コンディションにおける転写因子群を同定した。本年度は、低pH応答および転写機構を世界に先駆けて見出し論文報告した(Kondo et al. Cell Reports 2017)。また、(2)領域内(研究計画班:宮野班)との連携研究により、エピゲノム、トランスクリプトーム、インタラクトーム、メタボロームのオミクス統合解析を発展させて、癌細胞における生理活性代謝物の同定と機能解析を行い、低栄養の癌細胞、癌組織検体で、細胞膜合成経路抑制により蓄積する代謝物が癌の生存・増殖を促進する可能性を見い出した。
2: おおむね順調に進展している
現在までの研究進捗状況として、(1)腫瘍微小環境という「細胞文脈」において、mRNA-Seq 、ChIP-seqのゲノムワイドな解析を行いアクティブ領域(H3K4me3)、サイレント領域(H3K27me3)や、オープンクロマチン領域(Faire-Seq)を規定して低酸素・低栄養・低pHにおけるエピゲノム変化と転写因子を同定した。さらに、低pHにおけるエピゲノム・転写機構を世界に先駆けて見出し論文報告(Kondo et al. Cell Reports 2017)した。。また、(2)領域内の連携研究も順調に進んでおり、その成果として、エピゲノム、トランスクリプトーム、インタラクトーム、メタボロームのオミクス統合解析を発展させた数理システムの構築もす順調に進んでおり、腫瘍微小環境における新規の転写機構・代謝経路を見出すなど、本研究は概ね順調に進展している。
今後の研究の推進方策として、平成29年度は引き続き領域内の連携研究を発展させ、現状のオミクス統合解析にリピドーム、プロテオーム、リン酸化プロテオームを導入することにより、生理活性癌代謝物の同定・代謝律速経路の解明および機能解明を網羅的に行う。また、上述の代謝経路における代謝酵素などが、がん創薬標的となるか検討する。具体的には、上記計画に関与する転写因子、代謝酵素、代謝経路をノックダウンした際に現存する抗癌剤や分子標的治療薬との併用で相乗効果が認められるかどうかをin vivoでのマウスの実験系や臨床検体等を用いて検討する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Nucleic Acids Research
巻: 45 ページ: 4344-4358
doi: 10.1093/nar/gkx159.
Cell Reports
巻: 18 ページ: 2228-2242
doi: 10.1016/j.celrep.2017.02.006
http://www.lsbm.org/news/2017/0301.html
http://www.genome.rcast.u-tokyo.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/03/a62d8951728e5cf5ce0382c895756c61.pdf