米国の癌ゲノムアトラス(TCGA)プロジェクトや国際癌ゲノムコンソーシアム(ICGC)の大規模ゲノム解析により、遺伝子変異の割合(M-class)とコピー数変異の割合(C-class)はがん種特異的であり、この情報を踏まえて効率的に情報を統合する事の重要性が明らかになってきた。本研究課題では、網羅的遺伝子発現プロファイル情報(E-class)、C-class(CNV:コピー数変異)とM-class(Mutation:遺伝子変異)の情報を統合したECM分類手法を開発し、新規サブクラスに基づくがん分子病態の解明と、ドラッグリポジショニングを含む治療薬最適化アルゴリズムを患者モデルで検証することを目的としている。研究期間中、がん死亡原因の1位である難治性固形腫瘍の肺がんを対象に、M-classとC-classの割合が50%ずつであり、分子標的薬の開発が先行している肺腺がん(LUAD)を用いて遺伝子変異情報を主体にしたMEC/MCEモデルの構築手法を検討した。 当該研究では、KRAS陽性LUADにおいては、MEK阻害剤に対する耐性獲得メカニズムが上皮間葉転換(Epithelial to mesenchymal transition; EMT)を指標にして異なること、また、非小細胞肺癌細胞株34株を用いた解析により、EMTとmiR-200cおよびLIN28Bの発現パターンが相関することを示しており、M-classとEMTに関連するE-classの関連性を明らかにしてきた。 当該年度の検討では、第3世代EGFR阻害剤に対する耐性獲得メカニズムの解明を目的に、RNA-Seqを用いたKinase関連遺伝子発現プロファイルの解析を実施するとともに、リン酸化アレイの解析からMETやNRAS遺伝子の増幅の増幅を見出し、MEK阻害剤と第3世代EGFR阻害剤との併用療法を検討した。
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