公募研究
大腸癌の腫瘍内遺伝学的不均一性の空間的及び時間的分布の発生様式を明らかにすることを目的として研究を開始し、平成28年度中の進捗は以下の通りであった。1. 大腸癌の症例集積とPDXマウスモデルの作成九州大学病院別府病院外科にて手術を行った進行大腸癌症例2例において、摘出後の大腸癌原発巣組織を一部採取し、NOD/SCIDマウスの皮下に腫瘍組織を移植することでPDXマウスモデルを作成した。この際、同時に正常大腸組織の一箇所、大腸癌原発巣組織の複数箇所より組織を採取し冷凍保存した。マウスに移植された腫瘍が増大し、適切な容積となった時点でマウスを安楽死させ、腫瘍を摘出した。この腫瘍を更に別のマウスに移植することを繰り返し、経時的に腫瘍を採取した。2. DNA抽出と全エキソームシークエンス1.で得られた正常大腸組織、大腸癌組織及びマウスに移植して得られた大腸癌組織計13検体よりgenomic DNAを抽出し、全エキソームシークエンシングを行った。13検体全てにおいてシークエンスが終了し、現在遺伝子変異について解析中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では先行研究において使用され、冷凍保存されていた大腸癌組織を顕微鏡観察下にレーザーマイクロダイセクション法を用いて複数箇所採取し、全エキソームシークエンシングを行うことで空間的な遺伝子変異の分布を明らかにする予定であった。しかし凍結保存されている検体の薄切化が困難であったことや、同一実験系での結果の解釈が望ましいとの考えから、PDXマウスモデル作成時に採取した大腸癌原発巣組織を複数箇所採取し、PDXマウスより採取した腫瘍とともに全エキソームシークエンシングを行う方針とした。上記13検体を用いて空間的、時間的な遺伝学的不均一性の分布を明らかにしたのちにレーザーマイクロダイセクション法によって大腸癌原発巣組織の空間的な遺伝学的不均一性の分布を明らかにすることを検討する。現在13検体のシークエンスが終了し解析中であり、概ね順調に進展していると考えられる。今後の症例の追加及び解析方法については現在解析中の結果によって慎重に検討する。
本研究の当初の仮説は、「進行大腸癌の空間的及び時間的な遺伝学的不均一性は中立進化によってもたらされており、その発生様式は全体と部分が相似している」といいうものである。全エキソームシークエンス結果の解析を行い、遺伝子変異分布、コピー数変化を同定し、時間的な遺伝学的不均一性の発生様式を明らかにする。大腸癌原発巣組織をレーザーマイクロダイセクション法によって分割し、空間的な遺伝学的不均一性の分布を明らかにすることも検討したい。また、スーパーコンピューターを駆使したシミュレーションモデルによってこれらの発生様式を検証する方針である。さらに、これから得られた結果をもとにPDXマウスモデルにおいて既存の制がん剤を投与することにより腫瘍内遺伝学的不均一性の発生様式が変化するのかを検証し、大腸癌の治療抵抗性の獲得機序の理解の深化につなげたいと考えており、今後症例の追加を検討している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
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