公募研究
本課題で使用する化合物合成に利用するペプチド自動合成機PSSM8の不調によりピロールイミダゾールポリアミド(PIP)化合物合成に支障をきたし、平成28年度の計画が遅れたが、ビオチン化PIP-CTBの合成系を確立でき、化合物の結合するゲノム領域を直接同定するChemSeq法を新たに開発(PlosOne2016)し、化合物の作用機序を予測する解析が可能となった。具体的には、がん細胞株における形態変更、分化誘導をビオチン化化合物でも試み、ストレプトアビジンビーズによるビオチン化化合物と共沈するDNAフラグメントを回収しシークエンス解析すること、および化合物投与による遺伝子の発現変化を網羅的アレイ解析により同定を進めることでネットワーク解析を試みることが出来、がん細胞の病態病期を変更する機序と薬剤の標的となるゲノム領域、エピジェネティックに調節される責任遺伝子の解明を試みる検索技術の開発に目途を着けた。機能性化合物による上記の解析を繰り返すことで、標的ゲノムによりどのようなエピゲノムの変化が生じ、がん細胞形態が変化するかを詳細に検討し、データ蓄積が可能となり、化合物によるエピゲノム変化誘導の性質とがん細胞変化の相関を数理的に解析できると考えられ、解析法を検討し研究を進める。さらにPIP化合物は、直接実験動物へ投与が可能な低分子化合物であり、薬剤送達技術を必要とせず、培養細胞、マウス生体内で検討可能であるが、腫瘍への集積・貯留効果についても研究を進め、一定の成果を収めた。ヒストンアセチル化修飾酵素阻害剤(HDACi)およびヒストンリシンメチル化阻害剤のPIPとの複合化合物の合成スキームもほぼ確立されたため、今後、がんエピゲノムの変更に関して数理計算を基に予測するための基礎実験を積み重ね、最終的に生体で標的エピゲノムの変更を予測できる化合物合成技術確立を目指す。
3: やや遅れている
所有するペプチド合成機の不調により、ピロールイミダゾールポリアミド(PIP)化合物合成に支障をきたした。このため合成された化合物に不純物が混入する事例、合成そのものが失敗する事例が増え、合成の繰り返しや精製に時間がかかり、予定した化合物の合成をすべて行うことが出来なかった。PSSM8は、現在順調に合成できるよう回復したが、島津製作所が同機の販売、生産、部品供給を停止したため、今後また修理等に難渋すると考えられる。このため29年度、代替えとなるペプチド合成機の予算申請を行い、千葉県予算で購入できる運びであり、今後の合成は計画通り進められると考えている。
PIPの合成がPSSM8と7月購入予定の新規合成機で進めることが出来、平成28年度のPIP化合物の合成の遅れを取り戻すことが出来ると期待している。化合物との複合体の合成を進め、特定のゲノム領域での化合物によるエピゲノムの変更および細胞の表現型の変更を試みる。腫瘍細胞分化や細胞死を誘導できた化合物に対してはビオチン化を試み、本研究室で開発したChemSeq法により、直接化合物の結合するゲノム領域を同定し、さらに発現解析、エピゲノム解析を行うことで化合物の効果を検討する。またHDACiとの複合体に加え、28年度に開発されたKDM4(リシン脱メチル化酵素)の新規阻害剤について共同研究を開始しており、ヒストンテイルのリシン残基のメチル化によるエピゲノム変化の影響も検討を予定している。今後これらの化合物を様々なゲノム領域に送達させ、エピゲノムへの影響と誘導されたエピゲノム変化ががん細胞にどのような影響を与えるのかを検討し、がんエピゲノム構造がそのように作用するのかを機械学習による解析によりエピゲノム作用機序の解明とがん発症機序、がん治療への応用へと研究を進めていくことを検討していきたい。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Oncogene
巻: 35 ページ: 6350-6358
doi:10.1038/onc.2016.171
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DOI: 10.1021/acsomega.6b00229
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