公募研究
本年度は、解剖症例を用いて「がんの進化の探索とそれに基づく臨床病態予測の可能性」の実験を行った。本症例は多臓器転移を伴う患者で、死亡後約2時間で解剖を開始することが出来たことから、良質な研究試料が採取可能と考えた。また、生前の生検組織では、多彩な形態像を示していたことから、臨床・病理学的に興味深い症例であった。さらに、病気の進行が極めて早かったことから、がんのクローン進化に関する研究を、本解剖症例を用いて行うこととした。解剖症例で原発巣が大きいことから、予定していたオリンパス社製のGCM(Glass Chip Macrodissection)プロトタイプを用いず、原発巣の最大割のスライスを、凍結したまま肉眼的にさいの目に約5~10 mm角に分割して収集した(計:20部位)。原発巣は肉眼的にも、多彩な像を示している。さらに、4ヶ所の肝転移巣からも、凍結試料を採取した。各部位からHE染色用と免疫組織化学染色用のホルマリン固定標本、凍結組織からDNAとRNAを抽出した。DNAからは全エクソーム・シーケンス解析、メチル化解析(Infinium MethylationEPIC BeamChip)を行っている。また、RNAは解剖症例ではあったが、高品質のものが抽出可能であった。RNA-Seq(TruSeq RNA Access Library Prep Kit)も全部位のサンプルを用いて行った。現在はそのシーケンス・ランが終了し、情報解析を行っている。遺伝子変異、メチル化、RNAの発現解析を組み合わせたマルチオミックス解析を行い、がんのクローン進化を多角的に評価している。特に、集団遺伝学的な数理解析を行い、原発巣におけるゲノム・エピゲノム進化地図を作成している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Virchows Arch
巻: 471 ページ: 423-428
10.1007/s00428-017-2135-x