研究実績の概要 |
初年度となる本年度は、ネオジムを含む希土類元素全般についての全球濃度分布を、海洋大循環モデルを用いて再現することを試みた。実験のベースとなる海洋大循環モデルには、日本で開発が続けられてきたCOCOを用い、また、近年提唱された潮汐混合のパラメタ化(Oka and Niwa, 2013)を導入し、より現実的な水塊年齢を再現することができる物理場のもとで希土類元素の再現実験を実施した。希土類元素のモデル化においては、先行研究であるOka et al. (2009)のモデルを拡張し、海洋内部のスキャベンジング過程に加えて、海面からのネオジムの供給源および海底での除去過程をモデルに取り入れた。希土類元素の供給源については、鉄などと同様、大陸棚での海底堆積物からの供給が重要であることが明らかになりつつあるが、定量的な知見が不足しており、そのフラックスを観測データから直接与えることは困難である。そこで、先行研究(Arsouze et al. 2009; Rempfer et al. 2011など)を参考に、大陸棚上でのネオジム濃度の観測値(Jeandel et al. 2007)への「緩和」を行うことで、そのフラックス量を推定するという方法を採用した。供給源を陽に考慮した結果、Oka et al. (2009)ではうまく再現することができなかった「太平洋」「大西洋」「南大洋」における海盆間の濃度の差を、より現実的に再現することに成功した。 以上のように、初年度において、ネオジムを含む希土類元素全般について、それらの全球分布を再現するためのモデリング手法を確立することができた。
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