研究領域 | 海洋混合学の創設:物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動の解明 |
研究課題/領域番号 |
16H01595
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
三角 和弘 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (10462889)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 北太平洋 / 海洋物質循環 / 鉄 / 鉛直混合 |
研究実績の概要 |
西部北太平洋は基礎生産量が高く,生物活動によるpCO2の変動が非常に大きい海域である.この海域の基礎生産に鉛直混合がどの程度寄与しているか定量的に理解することがこの新学術領域研究のテーマの一つとなっている.この公募研究では北太平洋域の生態系-物質循環を計算することのできる数値モデルを構築し,鉛直混合が基礎生産に果たす役割を定量的に調べる. 平成28年度は北太平洋全域を水平解像度1/4度で計算する高解像度北太平洋生態系-物質循環モデルを構築し,50年間の長期計算を実施した.50年間の計算で中層までの主要な変数の長期トレンドが十分に小さくなり,気候学的平均場を得られることを確認した.モデルで再現された北太平洋中層水の広がりは観測と比べ弱かったが,より低解像度のモデルと比べ良好であり,今後,潮汐による鉛直混合をモデルに組み込むことで改善することが期待された. モデルで再現された北太平洋スケールの溶存鉄濃度は,有光層より下で特に再現性が高く,西高東低の溶存鉄の濃度分布は北太平洋中層水の形成に伴ってオホーツク海陸棚から西部北太平洋へ鉄が輸送されることで作られていることが示唆された.北太平洋中層水の上部および下部の密度面上の溶存鉄濃度分布の特徴は計画研究A02-3班が昨年度示したものと類似していた.平成29年度は,潮汐による鉛直混合をこのモデルに組み込み鉛直混合が鉄循環を介してこの海域の生態系や物質循環にどのような影響を与えているか調べる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は高解像度のモデルを構築し,気候学的平均場を計算することを目的としていた.1/4度の高解像度モデルを構築し50年間の計算が実施出来たことで概ね計画通りに研究は進んでいる. 当初の計画では1/12度の高解像度モデルで計算する予定だったが,1/4度のモデルでもこの海域の物質循環において重要な北太平洋中層水が再現できることが確認できたため,1/4度のモデルで計算することとした. 計算結果を観測と比較したところ,より低解像度のモデルよりも高い再現性をもち,縁辺海から外洋への鉄の輸送が再現されることが確認できた.窒素固定生物の挙動など一部で不具合が見られたが,動物プランクトンのパラメータを調整することで解決できることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
本新学術領域研究のテーマは鉛直混合であるが,平成28年度の計算では潮汐による鉛直混合のパラメタリゼーションは未導入であった.平成29年度は鉛直混合のパラメタリゼーションを導入し,その有り無しの計算結果の比較から,鉛直混合が鉄循環を介して北太平洋の物質循環に果たす役割を調べていく.
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