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2016 年度 実績報告書

親潮周辺海域における春季珪藻ブルームの形成機構と長期変動

公募研究

研究領域海洋混合学の創設:物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動の解明
研究課題/領域番号 16H01599
研究機関国立研究開発法人水産研究・教育機構

研究代表者

桑田 晃  国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, グループ長 (40371794)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード植物プランクトン / 珪藻 / 春季ブルーム / 親潮域 / 海洋生態
研究実績の概要

珪藻類は、海水の混合が盛んで下層から表層への栄養塩が豊富に供給される沿岸域・湧昇域における主要な基礎生産者であり、ブルームを形成する。北太平洋西部亜寒帯域の親潮域では、春季に高密度の珪藻ブルームが沿岸域から外洋域にわたり広域に形成される。この大規模な珪藻ブルームにより、親潮域では高い生物生産が維持され、世界有数の漁場が形成されている。近年、親潮域周辺海域の春季珪藻ブルームの形成維持には、鉄分を含む豊富な栄養塩類の供給プロセスとともに、供給された栄養塩を効率的に利用し活発に増殖する珪藻種細胞の供給プロセスも不可欠であることが示唆されてきた。
本研究は、珪藻各種個体群の動態に着目してブルーム形成期の珪藻各種の細胞供給過程と増殖過程の二点を解析することにより、親潮域周辺海域の春季珪藻ブルームの形成機構とその長期変動過程の解明を目指している。本年度は、細胞供給過程については、気象庁の親潮周辺海域におけるPHライン定線観測の海洋環境と表層の珪藻群集種組成の長期データベースを用いて、各珪藻種の個体群の季節変動を解析し、春季ブルーム形成の鍵種を抽出した。次にブルーム形成時の各鍵種の生存環境を海洋環境データより明らかにした。さらに冬季混合期のブルーム形成珪藻種の動態の把握のため2017年3月にAライン上で現場観測、培養実験を行った。増殖過程については、2016年5月にAライン上の親潮域で形成が見られた珪藻ブルームを対象にブルーム周辺海域の物理環境と珪藻群集構造の把握のためグリッド観測を行った。また、溶存鉄供給に対する珪藻各種の増殖応答の把握のため、過去のAライン観測において得られた溶存鉄データ、海洋環境、植物プランクトンの群集組成のデータを整理し、データセットを作成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、親潮域周辺海域の春季珪藻ブルーム形成を珪藻各種個体群の動態に着目し、ブルーム形成期の珪藻各種の細胞供給過程と増殖過程の二点を明らかにすることによりブルーム形成機構とその長期変動過程の解明を目指している。本年度は、1)珪藻各種の生存環境の解析、2)春季珪藻ブルーム形成過程の解析、3)冬季混合期のブルーム形成珪藻種の個体群動態の解析を行い、どの項目においても当初の計画通り順調に研究をすすめることができた。

今後の研究の推進方策

本研究では、親潮周辺海域の珪藻種による春季ブルーム形成機構を細胞供給過程と増殖過程の二点に着目して解析を進めている。今後は、細胞供給過程については、当海域における珪藻個体群の空間分布の季節変動を中心に、増殖過程については、ブルーム形成時の鉄分の供給過程と珪藻種の鉄分供給に対する応答過程を中心に解析を行う。最後に、得られた知見を総括し、春季珪藻ブルームの形成機構と長期変動過程の解析を行う。
1.ブルーム形成性の珪藻種の細胞供給過程:引き続き気象庁のPH-lineの長期データベースを用いて、ブルーム形成性の珪藻鍵種の通年の生存環境を解析し、生存環境と水塊構造の関係を解析する。さらに、これまでにA-ライン観測で取得した海洋環境と植物プランクトン群集組成の長期データを用いて、鍵種の動態をより詳細な空間スケールで明らかにし、ブルーム形成時における細胞供給過程を考察する。また、親潮域の定点において既に1年以上にわたり採取されたセジメントトラップの試料の分析を進め、親潮域におけるブルーム形成性の珪藻鍵種の沈降過程の解析を行う。
2.珪藻種の春季ブルームにおける現場での増殖過程:本年度のAライン上で行われた春季珪藻ブルームの観測データをとりまとめ、ブルーム形成過程の解析を行う。また、整理したA-ライン上の溶存鉄濃度と珪藻群集組成のデータセットを用いて、溶存鉄濃度に対する各種珪藻個体群の細胞密度の変化を解析し、ブルーム形成時における各種珪藻の鉄分供給に対する増殖応答過程を検証する。
3.春季珪藻ブルームの形成機構と長期変動過程の解析:本研究で得られた知見を総括し、親潮周辺海域における春季珪藻ブルーム形成機構を考察する。さらに、PHラインとAラインの珪藻群集構造の長期データを対象に、同海域における春季珪藻ブルームの長期変動過程を珪藻各種の個体群動態と海洋環境の変化に着目して解析する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] スペイン海洋科学研究所(CSIC)(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      スペイン海洋科学研究所(CSIC)
  • [学会発表] Mechanism and long-term change of massive spring bloom of diatoms in the Oyashio region2017

    • 著者名/発表者名
      Akira Kuwata
    • 学会等名
      International Symposium “Ocean Mixing Processes: Impact on Biogeochemistry, Climate and Ecosystem”
    • 発表場所
      東京大学(東京都・文京区)
    • 年月日
      2017-03-16
    • 国際学会
  • [学会発表] 親潮域における春季珪藻ブルームのメタトランスクリプトーム解析2017

    • 著者名/発表者名
      鈴木 重勝、片岡 剛文、渡辺 剛、桑田 晃、山口 晴代、河地 正伸
    • 学会等名
      第11回日本ゲノム微生物学会年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(神奈川県・藤沢市)
    • 年月日
      2017-03-03
  • [学会発表] 親潮周辺海域における春季珪藻ブルームの形成機構と長期変動2016

    • 著者名/発表者名
      桑田 晃
    • 学会等名
      北海道大学 低温科学研究所 共同研究シンポジウム
    • 発表場所
      北海道大学低温研究所(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2016-11-15
  • [学会発表] 親潮周辺海域における春季ブルーム形成珪藻の動態2016

    • 著者名/発表者名
      桑田 晃、渡辺 剛
    • 学会等名
      2016年度日本海洋学会秋季大会
    • 発表場所
      鹿児島大学(鹿児島県・鹿児島市)
    • 年月日
      2016-09-14

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公開日: 2018-01-16  

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