研究領域 | 非線形発振現象を基盤としたヒューマンネイチャーの理解 |
研究課題/領域番号 |
16H01609
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
日高 昇平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50582912)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 情報理論 / モデルフリー / コネクトミクス / 劣モジュラ / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
大脳皮質は、知覚、運動、情動といった脳の高次機能を司る重要な役割を担っている。先行研究から、個々の神経細胞タイプを決定する形態や、発現分子、電気的性質等のミクロ的な知見や、あるいは特定課題に賦活する脳領野などのマクロ的な知見が得られている。しかし、個々の神経細胞の関係を、ネットワークとみなした中間(メゾ)レベルに関しては、多くが未解明である。 メゾレベルの神経機能の理解するには、多数の神経細胞の解剖学的・情報論的ネットワークを同定する必要がある。メゾスケール(数十~数千細胞)であっても、多くの分析に必要な計算では指数的な組み合わせ爆発が問題となる。これに対し、数理計画法の優モジュラ関数の最大化に帰着させることで、実用可能な解析法を本研究は開発する。 平成28年度の目標として、メゾスケールの多変量時系列データから情報ネットワークを推定する方法論を確立し、その情報構造を一定水準で再現する非線形モデルの構築を設定していた。平成28年度は、ほぼこの当初の計画通りに進み、順調に研究成果を得られている。具体的には、情報量の集合関数の最大化に帰着される分割問題の高速な計算法の開発を終え、200程度の細胞数までであれば、十分に実用に耐える時間で計算できることを確認した。また、非線形振動子を結合したモデルの一つであるCoupled map latticeを用いたシミュレーションを行い、潜在的に複数の情報論的なクラスタが存在するときに、それらを検出できること、そしてk-means法や階層クラスタリングなどの既存の方法論では、こうした非線形系の情報論的分割を検出できない場合があること、などの結果を得ている。こうした一連の成果は、現在、計算神経科学論文誌へ投稿する論文にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の目標として、メゾスケールの多変量時系列データから情報ネットワークを推定する方法論を確立し、その情報構造を一定水準で再現する非線形モデルの構築を設定していた。研究実績に書いた平成28年度の研究実績は、当初の計画では平成29年度上半期までに達成する目標であったが、ほぼ平成28年度中にそれを達成することができた。具体的には、情報量の集合関数の最大化に帰着される分割問題の高速な計算法の開発を終え、200程度の細胞数までであれば、十分に実用に耐える時間で計算できることを確認した。また非線形振動子モデルにおいて、情報論的な結合の有無を検出するのに開発した方法論が有用であることも確認している。これらのことから、現時点での研究の進捗状況は、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、非線形振動子モデルのシミュレーションをより詳細に分析し、どのような場合に提案手法が有効であるか、その条件を調べる。また実データへの応用へと研究フェーズを移し、実験的な知見を得る方向へと進む予定である。ただし、当初連携の予定であった、実験データを取得する役割を持つin vivo班を担当する平が、米国に研究拠点を移したため、研究環境が変化し、当初予定より緊密な連携が難しくなっている。こうした現状を踏まえ、今後は、すでに実施している隔週のウェブ会議に加え、実地での密な会合の頻度を増やすなど、研究進展の遅れを補う方策を検討している。また、遠隔地での研究の連携をより容易にするため、ネットワーク経由でのデータの共有などを進めている。
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