公募研究
本研究では、パーキンソン病の霊長類モデルにおいて小脳から神経活動を記録し、大脳基底核で観察されるような低周波数帯での過活動がみとめられるか否かを検討するとともに、大脳皮質―大脳基底核―視床回路と小脳の間のネットワークにおける活動異常を明らかにするため、大脳基底核における低周波数帯での過活動と小脳の神経活動との関係を主にcross-frequency coupling解析を用いて検証することを目的としている。平成28年度は、研究実施計画に記載した(1)サルの課題トレーニング、記録部位の同定、およびコントロールデータの取得、(2)パーキンソン病サルモデルの作製およびモデルにおける多領域多点同時記録、(3)多領域多点同時記録データの解析のうち、研究計画(1)および(2)を実施した。主な研究実績は以下のとおりである。(1)サルの課題トレーニング、記録部位の同定、およびコントロールデータの取得:まず1頭のニホンザルを用いて、単純なボタン押し課題をトレーニングし、トレーニング終了後、頭部固定器具および記録用チャンバーの取り付け手術をおこなった。MRIを撮像後、電気生理学的マッピングの結果に従って、大脳皮質、大脳基底核、視床、小脳における記録部位を決定し、コントロールデータを取得した。(2)パーキンソン病サルモデルの作製およびモデルにおける多領域多点同時記録:マッピングおよびコントロールデータ取得が完了したサルにMPTPを静脈注射により投与し、パーキンソン病モデルを作製した。作製したサルモデルにおいて、コントロールデータ取得時と同様にして、安静時および課題遂行中の大脳皮質、大脳基底核、視床、小脳から神経活動(単一ユニット活動と局所電場電位)の同時記録を実施している。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の研究実施計画に記載した(1)サルの課題トレーニング、記録部位の同定、およびコントロールデータの取得、と(2)パーキンソン病サルモデルの作製およびモデルにおける多領域多点同時記録を実施しており、また、(3)多領域多点同時記録データの解析についても、すでにcross-frequency coupling解析を用いた手法を確立しているので、全体として研究が順調に進展していると考えられるため。
研究計画は当初の予定どおり順調に進展しており、平成29年度は前年度にスタートした研究計画(1)および(2)を継続するとともに、研究計画(3)を実施する。(1)サルの課題トレーニング、記録部位の同定、およびコントロールデータの取得:新たに1頭のニホンザルを用いて、ボタン押し課題をトレーニングする。パーキンソン病の症状は安静時および運動時でみとめられるため、安静時と課題遂行中の両方で神経活動を計測する。トレーニング終了後、頭部固定器具および記録用チャンバーの取り付け手術をおこない、MRIを撮像後、電気生理学的マッピングの結果に従って記録部位を決定する。具体的には、大脳皮質、大脳基底核、視床、小脳をターゲットとする。(2)パーキンソン病サルモデルの作製およびモデルにおける多領域多点同時記録:マッピングおよびコントロールデータ取得が完了したサルにMPTPを静脈注射により投与し、パーキンソン病モデルを作製する。モデル作製後、コントロールデータ取得時と同様にして安静時および課題遂行中の大脳皮質、大脳基底核、視床、および小脳から神経活動(単一ユニット活動と局所電場電位)の同時記録を実施する。(3)多領域多点同時記録データの解析:各領域における活動変化については、ニューロンの発火頻度や発火パターン、および局所電場電位のパワースペクトル密度などを指標にして解析する。特に、大脳基底核で観察される低周波数域(7-30 Hz)での過活動が小脳でも観察されるか否かについて詳細に検討する。その際、局所電場電位の周波数成分に着目した先進的な解析手法であるcross-frequency coupling解析を用いて、パーキンソン病サルモデルにおける神経ネットワークの活動異常について検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Neurosci Res
巻: 印刷中 ページ: -
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http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/systems_neuroscience/index.html