研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳波コヒーレンスのデータ(数十チャンネル)を、課題遂行に仮定される情報ネットワーク(数百~数千ノード、疎グラフ)と対応づけることで、脳波関連の機能情報ネットワークの推定手法を提案することである。平成29年度は、まず、平成28年度に引き続き、4脳領野×8,000ヶのスパイキングニューロンを用いた神経回路シミュレーションを行い、多脳部位ネットワークにおいても局所的な活動構造と脳部位間の脳波コヒーレンスの間に相関関係があることを確認した。次に、同手法が実脳波データに適用可能であることを示す目的で、計画班A03班との共同研究として皮質脳波データの解析を行った。実施計画にはなかったが、100チャンネル以上の脳波データに対して実用的な時間で解を得るために、提案手法の算法を検討し、提案手法をより簡易に計算できる重回帰分析の変法として再定式化した。予備的な解析結果によれば、脳波パワの解析結果と比べて脳波コヒーレンス解析を用いればより安定的に情報回路を推定できること、20Hz以下の低い周波数成分の脳波と40Hz以上の高い周波数成分の脳波では、得られる情報回路に質的な違いがあること、が示されつつある。今後は提案手法で得られた情報回路の生理学的妥当性を精査する必要があるが、平成28、29年度の研究により、脳波関連の機能情報ネットワークの推定手法を提案し、その手法が実用的な脳波解析手法となりうることを実脳波データを用いて示した。
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