公募研究
1.過重力による胸腺上皮細胞の遺伝子発現変動の解析:マウスへの14日間の過重力負荷は、持続的な胸腺上皮細胞数の減少を引き起こすことを報告した。その分子機構に関して知見を得るために、連携研究者の森田博士の協力のもと、野生型マウスと前庭破壊したマウスに14日間過重力負荷し、胸腺上皮細胞をセルソーターで分取した。現在、班員の村谷博士との共同研究として、RNA-seq法による遺伝子発現解析を行なっている。2.胸腺上皮細胞への後肢懸垂の影響:宇宙周回軌道滞在実験の地上モデル実験としてマウス後肢懸垂実験が行われる。この実験系は、後肢への重力負荷をなくす、体液を前半身側に移動させる、との主に2つの点で微重力の地上モデルとされる。またマウス後肢懸垂は骨細胞を減少させることが報告されている。そして骨細胞の減少は、胸腺の大きさを減少させるが、胸腺構成細胞、特に胸腺上皮細胞に及ぼす影響は、詳細に調べられていない。後肢懸垂14日間後に胸腺を採取して、胸腺細胞をフローサイトメーターにより解析した。胸腺の大きさは後肢懸垂により有意に減少した。ところが、胸腺を構成するT細胞の存在比率は、コントロールに比べて大きな変化がなかった。すなわち、14日間の後肢懸垂は、T細胞の分化には大きな影響を与えず、胸腺T細胞を非選択的に減少させることを示唆している。一方、胸腺上皮細胞の中で、髄質上皮細胞の割合が有意に減少した。髄質上皮細胞は、自己免疫疾患の発症抑制に不可欠な役割を持つため、後肢懸垂マウスは、自己免疫になるリスクが高まると予想される。3.胸腺髄質上皮細胞の前駆細胞の同定:過重力負荷や後肢懸垂は、胸腺の髄質上皮細胞に最も大きな影響を与える。その影響を受ける細胞は成熟した髄質上皮細胞ではなく、その前駆細胞である可能性がある。これまで前駆細胞が同定されていなかったため、その同定を行なった。
3: やや遅れている
過重力負荷マウスより上皮細胞を採取し、上皮細胞の遺伝子発現をRNA-seq法で解析する実験を、平成27年度に完了予定であったが、細胞の調製方法などの条件検討に予想以上の時間を要したため、次年度の解析実施へと変更したため。
今後、過重力を負荷したマウス、尾部懸垂マウスの胸腺上皮細胞について、遺伝子発現解析を行う。また放射線照射したマウスでも同様な解析を行う。得られた結果と、過重力負荷で変動する遺伝子群を比較し、過重力負荷とX線照射で共通して作動する機構と過重力あるいはX線照射だけで作動する機構を区別する。さらに過重力による遺伝子発現変動を誘導する転写因子あるいはシグナル因子候補の欠損マウスを用いて、過重力による遺伝子発現の変動が候補因子に依存することを実証する。さらに正常時あるいは過重力負荷時における、当該因子欠損マウスのT細胞数や活性化状態、血中抗体価、自己免疫の有無などを検討し、胸腺によるT細胞選択機構と体内のT細胞免疫機構に及ぼす影響を検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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