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2016 年度 実績報告書

宇宙における骨量低下の謎に迫る―破骨細胞分化因子RANKLの発現メカニズムの解明

公募研究

研究領域宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解
研究課題/領域番号 16H01634
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

篠原 正浩  東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60345733)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード微小重力環境 / 骨代謝 / 骨粗鬆症 / 破骨細胞 / RANKL
研究実績の概要

骨組織に対する力学的負荷は骨組織恒常性維持に非常に重要である。宇宙空間における微小重力環境や寝たきりといった骨組織に力が加わらない状態では、骨量が著しく減少し、骨折しやすい骨粗鬆症(不動性骨粗鬆症)に陥る。骨粗鬆症では、骨を破壊する破骨細胞の分化因子であるRANKLと呼ばれるサイトカインの発現亢進を介して破骨細胞の分化や骨破壊能が促進される。しかし、微小重力環境で骨量低下を引き起こすRANKL発現亢進の分子メカニズムは不明な点が多いことから、本研究ではRANKLの発現に焦点を当て、微小重力環境で骨量が低下するメカニズムを明らかにすることを目的とする。

今年度は、RANKL発現細胞を単離・同定するためのRANKL発現細胞レポーターマウスの作成を行い、ゲノム編集技術によりRANKLプロモーター制御下でtdTomato-Creを発現するノックインマウスの作成に成功した。
また、微小重力環境におけるRANKL発現の分子メカニズムを明らかにする目的で、既知のRANKL発現細胞のRANKLプロモーター直下にtdTomato-CreのcDNAをノックインした細胞株を樹立した。微小重力環境培養装置を用いてノックイン細胞を培養したところ、培養開始72時間においてtdTomatoの発現が確認され、in vitroにおける解析系の確立に成功した。
さらに、微小重力環境で誘導される骨組織の変化を明らかにするため、平成28年7月から8月にかけて国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」で行われた長期飼育マウスの骨組織解析を実施した。その結果、微小重力環境で飼育したマウスでは、1Gの人工重力環境で飼育したマウスと比較して、著しい骨量低下が認められた。また、骨組織の詳細な解析から、微小重力環境では破骨細胞による骨破壊が亢進していることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していたRANKL発現細胞レポーターマウスの作成は順調に終了し、マウスの系統確立を予定通り行なった。また、微小重力環境培養装置を用いた擬似微小重力環境下における細胞培養系を当初の計画通り確立し、この培養系におけるRANKL発現細胞でのRANKL発現誘導に成功、さらにRNA-seq解析による網羅的遺伝子発現解析を実施することで、RANKL発現細胞におけるRANKL発現制御メカニズムの解析を実施するための基盤を構築するに至っている。このほか、宇宙マウス実験におけるマウスの骨組織解析も実施し、骨組織より抽出したRNAを用いたRNA-seq解析も実施しており、多角的なRANKL発現制御メカニズムの解析が可能な基盤構築にも成功したことから、現時点で本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

次年度は、作成したRANKL発現細胞レポーターマウスを用いた尾部懸垂実験を実施し、骨組織に力学的荷重がかからない状況でRANKLの発現が誘導される細胞の同定並びに単離を実施、さらに網羅的遺伝子発現解析から力学的非荷重環境下でRANKLを発現する細胞の特性を明らかにする。また、当該マウスは蛍光タンパク質td-TomatoをCreリコンビナーゼとの融合タンパク質として発現することから、RANKL発現を制御することが想定される遺伝子のfloxマウスと交配することによりRANKL発現細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作成することが可能であり、今後実施する遺伝子発現解析を基盤として生体におけるRANKL発現制御因子の重要性を明らかにする。
一方、今年度確立したin vitroの疑似微小重力環境細胞培養系を用いて、RANKL発現細胞を培養し、RANKL発現誘導に関与する転写制御因子の同定を試みる。この解析から、RANKL発現細胞がいかなるメカニズムで微小重力を認識し、いかなるメカニズムでRANKL発現を誘導するのか、分子レベルで明らかにしていく。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Actin-binding protein coronin 1A controls osteoclastic bone resorption by regulating lysosomal secretion of cathepsin K2017

    • 著者名/発表者名
      Ohmae S, Noma N, Toyomoto M, Shinohara M, Takeiri M, Fuji H, Takemoto K, Iwaisako K, Fujita T, Takeda N, Kawatani M, Aoyama M, Hagiwara M, Ishihama Y, Asagiri M
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1038/srep41710

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mohawk transcription factor regulates homeostasis of the periodontal ligament2017

    • 著者名/発表者名
      Koda N, Sato T, Shinohara M, Ichinose S, Ito Y, Nakamichi R, Kayama T, Kataoka K, Suzuki H, Moriyama K, Asahara H
    • 雑誌名

      Development

      巻: 144 ページ: 313-320

    • DOI

      10.1242/dev.135798

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gene targeting of the transcription factor Mohawk in rats causes heterotropic ossification of Achilles tendon via failed tenogenesis2016

    • 著者名/発表者名
      Suzuki H, Ito Y, Shinohara M, Yamashita S, Ichinose S, Kishida A, Oyaizu T, Kayama T, Nakamichi R, Koda N, Yagishita K, Lotz MK, Okawa A, Asahara H
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci USA

      巻: 113 ページ: 7840-7845

    • DOI

      10.1073/pnas.1522054113

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Ground-based assessment of JAXA mouse habitat cage unit by mouse phenotypic studies2016

    • 著者名/発表者名
      Shimbo M, Kudo T, Hamada M, Jeon H, Imamura Y, Asano K, Okada R, Tsunakawa Y, Mizuno S, Yagami K, Ishikawa C, Li H, Shiga T, Ishida J, Hamada J, Murata K, Ishimaru T, Hashimoto M, Fukamizu A, Yamane M, Ikawa M, Morita H, Shinohara M, et al.
    • 雑誌名

      Exp Anim

      巻: 65 ページ: 175-187

    • DOI

      1538/expanim.15-0077

    • 査読あり
  • [学会発表] 関節リウマチ骨破壊と骨免疫学2017

    • 著者名/発表者名
      篠原正浩
    • 学会等名
      理論免疫ワークショップ
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      2017-01-19 – 2017-01-20
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨保護から寝たきりを防ぐ統合的研究2016

    • 著者名/発表者名
      篠原正浩
    • 学会等名
      数学協働プログラムスタディグループ
    • 発表場所
      松山
    • 年月日
      2016-08-16 – 2016-08-19
    • 招待講演
  • [学会発表] Roles of transcription factor Mohawk in periodontal ligament2016

    • 著者名/発表者名
      Koda N, Shinohara M, et al.
    • 学会等名
      International Association for Dental Research 2016
    • 発表場所
      Seoul, Korea
    • 年月日
      2016-06-21 – 2016-06-25
    • 国際学会
  • [図書] 実験医学別冊『マウス表現型解析パーフェクトガイド』、「骨組織系の表現系解析」2016

    • 著者名/発表者名
      篠原正浩、浅原弘嗣
    • 総ページ数
      10
    • 出版者
      羊土社
  • [図書] THE BONE、「免疫複合体はFcRγシグナルを介して骨代謝を制御する」2016

    • 著者名/発表者名
      篠原正浩
    • 総ページ数
      1
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] THE BONE、「IgG抗体の糖鎖修飾が破骨細胞分化と骨量減少を決定する」2016

    • 著者名/発表者名
      篠原正浩
    • 総ページ数
      1
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 分子リウマチ治療、「次世代の分子ターゲット Btk」2016

    • 著者名/発表者名
      篠原正浩、高柳広
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      先端医学社
  • [備考] 35日間の長期飼育で骨や筋肉の量が顕著に減少 ~「きぼう」における、長期飼育マウスの地上分析速報~

    • URL

      http://iss.jaxa.jp/kiboexp/news/20161205_mouse.html

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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