骨は形成と吸収を繰り返すことで恒常性を維持する。宇宙という無重力状態になると骨量が減少するため恒常性維持には重力が重要であると考えられる。本研究では国際宇宙ステーションで行った実験結果をまとめあげ、発現遺伝子のデータを基盤として、地上実験を進めた。 重力影響を調べるため加重力環境でメダカを飼育する実験系を作り骨組織の形成をマイクロCTを用いて詳細に調べた。その結果、背骨が曲がる変形が見られ、三半規管に存在する耳石の形成異常が観察された。重力環境が骨組織の形成を制御していることが示された。骨芽細胞と破骨細胞が光る遺伝子改変メダカで調べると、これらの細胞に異常がみられることが示された。 無重力環境下における骨吸収活性化に対してグルココルチコイドシグナルの関与が示唆されたこと、またグルココルチコイドの骨に対する生理学的・病理学的作用は十分に解明されていないという研究背景から、グルココルチコイドシグナルが骨代謝に及ぼす影響に注目し、骨に関連する遺伝子改変メダカを用いることで未知なる骨吸収機構の解析を試みた。破骨細胞の分化や活性に関連する遺伝子改変メダカの作製と、メダカの鰭条骨を骨折させて、その部位に出現する破骨細胞と骨芽細胞を経時観察できる骨折修復モデルを用いて骨吸収機構を調べた。メダカ骨代謝においてグルココルチコイドがどのように作用するか調べるために、メダカにグルココルチコイド製剤を濃度別に投与する実験を行ったところ、グルココルチコイド製剤は骨代謝が盛んな咽頭歯骨で濃度依存的に破骨細胞と骨芽細胞を減少させることが示唆された。グルココルチコイド受容体欠損メダカを作製したところ、骨折によって動員される破骨細胞と骨芽細胞の量に変化が生じ、骨代謝にグルココルチコイドシグナルが重要であることが示された。
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