研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
16H01637
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
島田 浩二 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (00711128)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス / 閉鎖環境 / 養育環境 / 社会性 / 社会脳 / 社会神経科学 |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙と地上の高次ストレス下での社会性機能の維持(破綻)機構を解明すること、その宇宙科学研究の成果を現代ストレス社会の病理の克服に応用することを目的とするものである。この目的を達成するために、本研究は(1)閉鎖環境ストレスと(2)養育環境ストレスといった2つの高次ストレス環境における社会的情報処理プロセスの機能変化および神経生物学的な基盤に関する研究に取り組む計画である。そこで本年度は、(1)閉鎖環境ストレス研究として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が有する閉鎖環境適応訓練施設に2週間滞在する閉鎖実験にサンプルシェアとして参加し、閉鎖環境ストレスが社会性機能に及ぼす影響を調べるための心理学実験データを取得した。社会生活を送る上で必要不可欠な社会性機能のうち表情認知に焦点を当てた。現在、これらの実験データの解析に取り組んでいる。また、(2)養育環境ストレス研究として、養育環境ストレスが社会性機能およびその神経基盤に及ぼす影響を調べるための脳機能イメージング実験に取り組んできた。その実験データに対する個人差解析の結果、抑うつ気分がより高い養育者ほど、表情認知課題を遂行中の右半球の腹外側前頭前野の活動が有意に低下したが、その課題成績との間に相関関係はなかった。また、養育者の抑うつ気分には養育ストレス指標の中でも「社会的孤立」が有意に影響を及ぼしていることが分かった。本結果は、社会性機能の低下に先立って社会脳の機能低下が生じるという前駆現象と解釈され、ストレス状態が深刻化する前の予防的指標の開発に繋がるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は計画調書に記載された研究を予定通り遂行できただけでなく、研究データの解析から論文執筆・投稿までを完了することができた。また、本研究課題の研究成果を特許として出願することができた。その点で、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きJAXA閉鎖環境適応訓練施設を用いた閉鎖実験にサンプルシェアとして参加し心理学実験データの取得を進めることに加えて、現在取得済みの実験データ解析により、閉鎖環境ストレスが社会性機能に及ぼす影響を明らかにする。また、他機関とのデータシェアの可能性を探り、例えば、内分泌機能(唾液中コルチゾルなど)と社会性機能との間の関係性について検討を試みる。また、養育環境ストレス研究では、養育環境ストレスと課題時-脳機能の関係性だけでなく、安静時-脳機能や脳形態の画像データを用いた多角的な脳画像解析に取り組み、また、養育環境ストレスで修飾されうるエピジェネティックな機構(例、DNAメチル化)について検討を試みる。
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