公募研究
DNA二重鎖切断を緑色蛍光のドットとして可視化できるレポーター遺伝子を安定に導入した細胞株を効率よく樹立するために、当該レポーター遺伝子のDNA断片をレンチウィルス作成用プラスミドpCDH-EF1-MCS-IRES-Puro(SBI#CD532A-2)に組み込んだ。構築したプラスミドをパッケージング細胞に導入し、レンチウィルスを作成する系を確立した。当該ウィルスをヒトの子宮および腎臓などに由来する細胞株に感染させ、α線、X線、γ線を照射し、生じたDNAの損傷をリアルタイムに可視化した。その結果、γ線の方がα線と比較してDNA損傷能が強いことが確認された。一方、γ線とα線によって生じたDNA損傷の修復速度を比較した場合、前者の方が早かったことから、α線が修復しにくいDNA損傷を生じる可能性が示唆された。また、当該レポーター遺伝子の遺伝子組換えマウスを作成するため、レポーター遺伝子を計326個のES細胞にマイクロインジェクションした。得られた遺伝子改変ES細胞を対象にジェノタイピングを行い、レポーター遺伝子が組み込まれた遺伝子改変クローンを選択、偽妊娠マウスに戻して17匹の産仔を得た。うち3匹は食殺されたため、残った14匹の産仔を対象にジェノタイピングを行い、目的のトランスジェニックマウスを2系統樹立できたことを確認した。F0世代ではレポーター遺伝子の発現が認められたが、マウスの継代を重ねるうちに緑色蛍光が減弱したため、transgeneがサイレンシングされてしまった可能性が考えられた。そこで目的の遺伝子改変マウスを樹立する手段として、サイレンシングを受けにくいRosa26遺伝子座に当該レポーター遺伝子をノックインすることとし、ターゲティングベクターを構築した。
3: やや遅れている
培養細胞を用いた実験はおおむね順調に進んでいるが、DNA損傷を可視化するための遺伝子改変マウスの樹立の方がやや遅れている。具体的な問題は、レポーター遺伝子を組み込んだマウスは作成できたものの、緑色蛍光発現遺伝子がサイレンシングを受けてしまったことである。この問題を克服するために、トランスジェニック法ではなくノックイン法にで当該レポーター遺伝子をROSA26 locusに組み込む手法を取ることし、それに向けてターゲティングベクターの構築を完了した。以上、総じて、「やや遅れている」と判断した。
H28年度に構築した実験系を用いて今後は、α線・γ線・X線のほか宇宙放射線に含まれる他の線質の放射線(重粒子・陽子線等)によって生じるDNA損傷の発生頻度と修復活性を評価し、遺伝子改変マウスを用いる実験に活かせる基本的パラメーターを取得する。またEGFP-53BP1Mノックインマウスを樹立し、線質の違いが各臓器の放射線感受性とDNA損傷修復能に及ぼす影響を、組織・個体レベルで解析する。
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http://radiotherapy.kuhp.kyoto-u.ac.jp/biology/index.html