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2016 年度 実績報告書

閉鎖空間が哺乳類代謝の恒常性維持に与える影響の網羅的解析

公募研究

研究領域宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解
研究課題/領域番号 16H01647
研究機関自治医科大学

研究代表者

西村 渉  自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00334433)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード特殊環境 / 細胞・組織 / 遺伝子 / 宇宙空間 / 宇宙科学
研究実績の概要

宇宙ステーションや月・火星などにおける、長期に渡る閉じられた空間での生活が、臓器や細胞に与える影響は不明である。しかしその影響について、閉鎖環境に滞在したヒトから臓器を取り出し、分子生物学的解析を加えて明らかにする事は難しい。またこれまでに、長期にわたるマイルドかつ持続的なストレッサーがマウスに与える影響を解析した研究は、ほとんどない。そこで本研究では、閉鎖環境がマウスの代謝の恒常性維持に与える影響について解析する。本年度はまず、通常の28%の体積の閉鎖空間に飼育した8週齢のC57BL/6Jマウスを解析した。閉鎖環境下では、体重増加の有意な抑制と食欲抑制が認められた。視床下部-下垂体-副腎系を介するストレスメディエーターとしての血漿コルチコステロンの濃度は、飼育1-2日目に増加し、いったん低下した後、21日目以降に再上昇する傾向を認めた。コルチコステロン濃度と体重の間には負の相関が認められたが、血糖値には有意差を認めなかった。また飼育28日目の血液検査では、血中TGとALTの有意な低下、BUNの有意な上昇を認め、低栄養とともに肝機能障害を認めた。一方、臓器重量には変化を認めなかった。以上より閉鎖空間滞在はマウスにとって、マイルドなストレッサーとなる事が明らかになった。次に、肥満が閉鎖空間ストレスに与える影響を、肥満モデルのdb/dbマウスを用いて解析した。閉鎖空間滞在群では、食欲抑制、体重減少、血糖値の低下傾向を認めた。コルチコステロン濃度は、飼育開始翌日と14日目以降に上昇する傾向を認めた。また、飼育28日目に胸腺重量の有意な低下を認めたが、副腎、性腺、脾臓の重量には対照との差を認めなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、閉鎖空間滞在モデルマウスを作製し、全身の表現型の網羅的かつ統合的スクリーニングによりそれらマウスの表現型を明らかにして、標的臓器として肝臓を同定するに至った。しかしながら、標的臓器における網羅的遺伝子発現解析までには至らず、閉鎖環境が代謝に与える影響の分子メカニズムは同定できなかった。

今後の研究の推進方策

本年度の研究で、閉鎖空間滞在は特定の種のマウスにとって、持続的でマイルドなストレッサーとなる事が明らかになった。このモデルの確立により、マウス拘束モデルなどこれまでのストレス研究によくみられる、激烈で短期限定的なストレッサーの影響とは異なり、現実に即したストレッサーが与える影響を明らかにできる。つまり、このマウスについて、標的と考えられる組織・細胞を解析することにより、閉鎖空間滞在が生体代謝に与える影響を分子レベルで明らかにする事が可能となる。
ストレスのメディエーターとしては、視床下部-下垂体-副腎系、交感神経系、サイトカインなどが知られている。今後は閉鎖空間が、コルチコステロンだけでなく、IL-6、TNF-αなどのサイトカインや神経伝達物質を介して、どのように生体の反応を引き起こすのかを解析する。また、肝臓、膵島などの組織学的、あるいは分子生物学的解析により、閉鎖空間滞在が生体代謝に与える影響の分子メカニズムを明らかにする。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Usefulness of miRNA profiles for predicting pathological responses to neoadjuvant chemotherapy in patients with human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer.2017

    • 著者名/発表者名
      Ohzawa H, Miki A, Teratani T, Shiba S, Sakura Y, Nishimura W, Noda Y, Fukushima N, Fuji H, Hozumi Y, Mukai H, Yasuda Y.
    • 雑誌名

      Oncology Letters

      巻: 13巻 ページ: 1731~1740

    • DOI

      https://doi.org/10.3892/ol.2017.5628

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mechanism of dendritic translation and localization of brain-derived neurotrophic factor.2016

    • 著者名/発表者名
      Oe S, Miki H, Nishimura W, Noda Y.
    • 雑誌名

      Cell Structure and Function

      巻: 41巻 ページ: 23~31

    • DOI

      doi: 10.1247/csf.15015

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 膵:β細胞の脱分化と機能障害2017

    • 著者名/発表者名
      西村 渉、野田泰子
    • 学会等名
      第122回日本解剖学会総会・全国学術集会(シンポジウム・体細胞分化と組織幹細胞)
    • 発表場所
      崎大学坂本キャンパス(長崎市)
    • 年月日
      2017-03-28
  • [学会発表] 高度肥満患者および肥満マウス由来内臓脂肪・皮下脂肪発現遺伝子の比較解析2016

    • 著者名/発表者名
      宇田川陽秀, 南茂隆生, 舟橋伸昭, 平本正樹, 西村 渉, 松本健治, 関 洋介, 笠間和典, 安田和基
    • 学会等名
      第37回日本肥満学会
    • 発表場所
      東京ファッションタウンビル(東京都江東区)
    • 年月日
      2016-10-08
  • [学会発表] 膵β細胞の発生・分化・恒常性に対する転写因子の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      西村 渉
    • 学会等名
      岡山大学医歯薬学総合研究科大学院特別講義
    • 発表場所
      岡山大学医学部(岡山市)
    • 年月日
      2016-07-06
    • 招待講演
  • [学会発表] 高度肥満患者由来内臓脂肪・皮下脂肪の遺伝子発現の比較解析2016

    • 著者名/発表者名
      安田 和基, 宇田川 陽秀, 南茂隆生, 舟橋 伸昭, 平本 正樹, 西村 渉, 松本 健治, 関 洋介, 笠間 和典
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都市)
    • 年月日
      2016-05-20
  • [学会発表] 脂肪細胞培養上清によるグルココルチコイド受容体を介した膵β細胞機能変化2016

    • 著者名/発表者名
      宇田川陽秀, 舟橋伸昭, 西村 渉, 平本正樹, 川口美穂, 南茂隆生, 安田和基
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都市)
    • 年月日
      2016-05-19
  • [学会発表] ゲノム網羅的解析結果を用いた膵島代償機序の検討2016

    • 著者名/発表者名
      南茂隆生, 宇田川陽秀, 舟橋伸昭, 川口美穂, 上番増喬, 平本正樹, 西村 渉, 安田和基
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都市)
    • 年月日
      2016-05-19
  • [学会発表] 遺伝子cis調節領域の網羅的解析による膵島代償機序の検討2016

    • 著者名/発表者名
      南茂 隆生, 宇田川 陽秀, 舟橋 伸昭, 川口 美穂, 上番増喬, 平本 正樹, 西村 渉, 安田 和基
    • 学会等名
      第53回日本臨床分子医学会学術総会
    • 発表場所
      東京国際フォーラム(東京都千代田区)
    • 年月日
      2016-04-15

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公開日: 2018-01-16  

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