公募研究
1.「効果的な人工重力+運動処方の開発」これまでに開発した人工重力負荷+運動負荷は、最初に1G+60W負荷を行い、5分完遂すれば重力と運動負荷量をそれぞれ交互に0.2G, 15Wずつ増加させるG, exercise step-up method(G,EX step-up法)という方法であるが、本法を用いた。2.「遠心機による耐G機能の数値化」 耐G機能を数値化するため,end pointまでのΣ(G負荷×秒数)を、耐G指数と定義し、その数値の変化により耐G機能を数値化した。これにより被験者の耐G機能が,模擬微小重力環境(ベッドレスト)や対抗措置負荷により、どのように変化するかを数値化することが可能となった。3.「G,EX step-up 法による20日間ベッドレスト中の耐G機能、循環血液量、筋萎縮、骨代謝の変化」 対抗措置群と対照群を比較したところ、耐G機能は対抗措置群で増加したが、対照群では減少した.循環血液量は,対抗措置群ではベッドレスト前と変化がなかったが、対照群では20%程度の減少を示した。筋萎縮に対する影響は、大腿四頭筋では有効であったが、下腿三頭筋では有効性が示されなかった。骨代謝に対しては、骨量減少が有意に抑制された。4.国際宇宙ステーション搭載への道」 これまで国際宇宙ステーションにおける人工重力実験はAGREE計画の中止で停滞していたが、このたびJAXAの先導により,HTVに遠心機を搭載し、「きぼう」に装着した状態で人工重力実験を行う計画が公表された。これにより現状の小型化された遠心機+運動付加装置をHTVに搭載する方向性が示された。
2: おおむね順調に進展している
人工重力+運動負荷装置を新型に変更し,心臓レベルにおいて,2Gが負荷できるように改造した.人工重力を徐々に負荷し,運動を負荷しない場合,どのくらいのG負荷により中止基準に達するか,をもとに,各個人のG耐性を数値化した.この値は,国際学会で提唱し,多くの賛同を得ている.さらにG負荷を行った際に,無重量状態を模擬すると言われる-6° head-down tiltに応じた体液分布の変化も生体インピーダンス(BIA)法により確定できた.これまでに時間経過に伴い,体内水分の移動は明らかになっていなかったが,BIA法により可能となった.これにより,体内循環血液量が時間に伴いどのように変化するかが明らかになり,対照では20日間で21%減少する循環血液量が,人工重力+運動負荷により,ほとんど減少しないことが明らかになった.骨量減少に対する効果は,十分明らかとなったが,筋萎縮に対する効果はいまだ十分ではない.大腿四頭筋の萎縮防止に効果があることは判明したが,下腿三頭筋(ヒラメ筋,腓腹筋の萎縮防止に本装置が有効であるかどうかを立証する必要がある.購入した連続血圧測定計CNAP Monitorが正確な血圧を測定できるかを評価した.右手にこれまでに使用していたFinapresを,左手にCNAP Monitorを装着し,安静時,Valsalva負荷時,運動時に両者の波形の相似を評価した.その結果,Finapresでは120拍/分では追従できなくなるのに比較し,CNAP Monitorは150拍/分でも追従可能であった.残る問題点は,ベッドレストをいかに行うかである.現在のところ,人工重力+運動付加装置が設置してある岐阜医療科学大学との協議を行っているが,なかなか許可が出ない.その協議を進展させ,ベッドレストを行うことが今後残された課題である.
人工重力+運動付加装置が体液維持,一部の筋萎縮,骨量維持,循環機能に対し,ある程度有効であることが判明したため,残る筋萎縮防止,各方面の骨量マーカーの検索,循環機能の心エコーによる心機能維持を評価する必要がある.以上の系に対し,当研究室の開発した重力・運動ステップアッププロトコールが,小型化した人工重力+運動付加装置にも適用できるかも今後の課題といえる.このようなすべての系に対し,人工重力+運動付加装置が有効と判明した現在,実際の無重力下において,有効であることを実証することが最終目標となろう.その目的を達成するため,今後は,当研究室の保持する遠心機+運動付加装置を使用して,小型化した装置でも十分な重力負荷+運動負荷がかけられるようなプロトコールを作成する必要がある.同時に,国際宇宙ステーションにおけるヒトを対象とした実験も進行させて,宇宙飛行デコンディショニングに対する人工重力+運動負荷の有効性を確立し,月基地、火星探査への応用を推進させる必要がある.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件) 図書 (4件)
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