研究領域 | 宇宙からひも解く新たな生命制御機構の統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
16H01653
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阪上 朝子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90462689)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ライブイメージング / 蛍光プローブ / 微小重力 / 宇宙放射線 |
研究実績の概要 |
a. 可変重力環境における基本的生命現象の可視化 <地球環境基本データの蓄積>Fucciおよび酸化ストレスプローブを恒常的に発現する細胞株を複数種作製し、地球環境における細胞の増殖パターンやストレス応答について時空間情報のデータ化を進めた。細胞種やその環境によって応答が異なる事が分かってきた。連携研究を視野に、蛍光を保持したままの細胞固定法の確立を行った。 <宇宙環境実験>擬似微小重力実験(3Dクリノスタットなど)の実験環境提供について領域内に連携を図った。また、北川鉄工よりZeromoの1か月間の貸与を受けプレ実験を行った。疑似微小重力を体験した細胞では、酸化ストレスプローブが反応する様子が見られた。今後詳細な解析へと進めていく。 b. 宇宙放射線被曝擬似実験等による、細胞ダメージの可視化 領域内より宇宙放射線被曝擬似実験環境の提供を受け、Fucciや酸化ストレスプローブの発現細胞で細胞動態を可視化することを目標に、まず研究室で保有しているUV crosslinkerを用いた細胞ダメージの可視化実験をすすめた。time-lapse imaging を継続したままUV照射を与える実験系を構築した。UVダメージに対して2日間以上の細胞動態を追跡することで、2.4 J/m2 までの照射量では、一部S期遅延などを経過しつつも通常の細胞周期に復帰すること、しかし8 J/m2 を超える照射量では、細胞の応答は急激に変化し、強いS期停止および細胞核の巨大化がおこること、さらに80 J/m2 以上では、数時間のうちに多くの細胞が細胞死にいたること、などが明らかとなった。また、細胞死に向かうきっかけはUV damageを受けた際、その細胞が居た細胞周期と相関があることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
擬似微小重力実験(3Dクリノスタットなど)の実験環境提供について領域内に連携を図り、2017年4月に実験装置の貸与を受けることとなった。擬似微小重力実験においては2016年度はデモによるプレ実験に留まったが、2017年度にはイメージング培養容器及び、蛍光イメージング装置の検討と並行して、微小重力環境における実験を重点的に推進していくこととする。
また宇宙放射線被曝擬似実験環境の提供に関しても、2017年度に共同研究を開始できる見通しが立っている。2016年度に行ったUV damage に対する細胞の応答の可視化実験のノウハウを適用し、宇宙放射線被曝に対する細胞応答の可視化をスムースに進めていけると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに我々は、“実験を行う際の細胞の密集度や足場環境によっても、細胞は異なる反応を示す”という現象を目撃してきた。蛍光プローブで経時的にイメージング(FACSソーティングも併用)を行うことで、その一瞬の細胞のHeterogeneityを可視化することができる。時間情報、空間情報、重力情報の視点から、宇宙環境における細胞動態の理解をすすめていく。 今後は、実際に3Dクリノスタットを導入していく。Fucciおよび酸化ストレスプローブの恒常発現細胞株に加え、Fucciマウスから採取する破骨細胞や造血幹細胞についても3Dクリノスタットを用いて微小重力への応答を確認していく。 UV damage実験において確立した実験系を、宇宙放射線被曝擬似実験に応用すべく、領域内に実験環境の提供を図る。
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