公募研究
宇宙環境おいて、ヒトは常に宇宙放射線を被ばくするため、将来の長期滞在に向けて最も関心の高い人体影響は、宇宙放射線被ばくによる発がんと継世代影響である。宇宙放射線の成分は地上と異なり、陽子線、中性子線に加えて、鉄イオンのような重粒子線が含まれるが、その発がんリスクのデータは不足している。我々は、これまでにB6C3F1マウスに鉄イオン、シリコンイオン、またはアルゴンイオンを照射した実験群の終生飼育を終了している。また、誘発された病変については、アーカイブサンプルとして、凍結サンプルと病理組織標本が保存されている。本研究では、①病理解析を行い各臓器の発がんリスクを求め、さらに、②ゲノム変異解析を行うことでLETにより発がんメカニズムが異なるかを検討し、重粒子線(鉄イオン、シリコンイオン、アルゴンイオン)による、発がんリスクとゲノム変異メカニズムを新たに提示することを目的とする。本年度は、特に照射後に発生した病変の病理標本について病理解析を進めた。重粒子線イオン線照射後に発生したマウスの病理切片(HE染色済み)をデジタル画像として保存した。このデータについて、病理専門家の指導の下、病変ががんであるかどうかを判定した。自然誘発がんに比べて特徴的な病理組織が観察される傾向が明らかになってきた。また、リンパ腫のタイプ(Tリンパ腫または Bリンパ腫)を同定するための免疫染色の系の確立をした。また、リンパ腫に関して、遺伝子変異解析の為のDNA抽出方法についても検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、特に照射後に発生した病変の病理標本について病理解析を進めた。その結果、肝細胞がん、肺がん、リンパ腫に加え、肺や肝臓に遠隔転移を示す骨肉腫や肺に転移した皮膚がんを認めた。また、肝細胞がんと皮膚の扁平上皮がんが同時に認められる二重がんや肝細胞がん、肺腺腫、卵巣の悪性顆粒膜細胞腫を認める三重がんを有する固体も観察された。また、一部のがんのサンプルについて、遺伝子解析の検討を開始した。
今後、病理解析で明らかになったがんについて、遺伝子変異解析を進め、高LET放射線に被ばくした後発生したがんのゲノム変異の解析し、その特徴を調べる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Radiation Research
巻: 187 ページ: 210-220
10.1667/RR14478.1
巻: 186 ページ: 407-414
10.1667/RR14499.1