研究実績の概要 |
本研究の目的は、ISS低照度環境を模擬した隔離実験および疫学調査により、低照度環境での内的脱同調出現を検証し、併せてリスク要因(クロノタイプ、光同調能、社会・その他の生物学的要因)の評価を行うことである。 本年度は昨年度に引き続き内的脱同調検証実験を実施した。ISSの光環境(覚醒期間で約100lux)を想定した4日間の低照度隔離実験の被験者として健常成人5名を積み増し、概日リズム位相(メラトニン分泌開始時刻)と睡眠覚醒スケジュールとの乖離を指標とした低照度環境による内的脱同調の出現についての検証を進めた。計17名の結果から、ISSを想定した低照度環境での内的脱同調の出現を昨年度に引き続き確認した(平均27.6分、95%信頼区間14-41分)。3日目起床時の1時間の高照度光曝露による光反応性と、1日目から2日目の位相の変化量との相関もまた内的脱同調のリスク要因として改めて示された。一方、個人のクロノタイプ特性(朝型夜型)は有意な関連がみられなかった。 本年度はまた、内的脱同調の表現型のひとつである社会的ジェットラグ(社会的制約がある平日の睡眠と生物時計と一致した制約のない休日の睡眠との時間差)を指標としたWeb全国調査を実施した。データに不備がなく社会的ジェットラグデータを利用可能な1072名を対象に解析した結果、240名(22.4%)に1時間以上の社会的ジェットラグが観察され、探索的ロジスティック回帰分析の結果、夜型であること(OR=3.666)が最も高い相対リスクを示し、次いで平日の睡眠時間(<5h:OR=3.441, 5-6h:OR=2.188, 6-7h:OR=2.126)、休日の昼寝(>60min:OR=1.909, 30-60min:OR=1.645)であった。 本結果から、生物時計の表現型のひとつであるクロノタイプは内的脱同調の有力なリスク因子であることが示された。
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