研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01662
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
嵯峨 智 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10451535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タッチパネル / 触覚ディスプレイ / 静電気力 / 剪断力 / 錯触覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,近年広く普及するタッチパネル上での情報化された仮想物体への直感的な双方向触覚インタラクションを容易なものとし,より高い質感を提示可能なデバイスのための触覚提示手法の確立と,錯触覚における人間の質感認識機序の分析である.そのため,剪断力を用いた錯触覚現象を積極的に利用し,タッチパネルなどの平面上での仮想物体との視触覚一致型相互インタラクションを実現する.
初年度は,ディスプレイ部の多自由度化のための制御手法の確立を目標とした.これまで我々が開発してきた剪断力ディスプレイでは,四本の糸でディスプレイの上に置いた一本の指に対し適切な剪断力を加えることでさまざまな凹凸やテクスチャの再現を実現してきた.初年度開発のタッチディスプレイは,剪断力で凹凸やテクスチャを提示するという本ディスプレイの機能はそのままに,提示に利用するハードウェアデバイスを多自由度に改良するものである.今まで剪断力は糸による牽引力で発生させていたが,この手法を静電気力により代替することを目指した.初年度作成したディスプレイをもとに,基礎的な検証実験を実施し,これまでの提示手法そのままでは狙いの提示が難しいことが判明したため,錯触覚を活かした提示手法について被験者実験を通じた検証を実施し,有効な入力信号の生成手法について検討している.
また,並行してディスプレイで提示するための入力信号のもととなるデータベースを作成するため,日常の触覚信号を収集するシステムを先行開発した.これは,加速度センサと省電力マイコンを利用したユビキタスセンシングシステムと,信号を機械学習により分類する解析システムからなる.本システムにより日常生活で発生するさまざまな振動信号を収集,分類が可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,ディスプレイ部の多自由度化のための制御手法の確立を目標とした.これまで我々が開発してきた剪断力ディスプレイでは,四本の糸でディスプレイの上に置いた一本の指に対し適切な剪断力を加えることでさまざまな凹凸やテクスチャの再現を実現してきた.初年度開発を行うマルチタッチディスプレイは,剪断力で凹凸やテクスチャを提示するという本ディスプレイの機能はそのままに,提示に利用するハードウェアデバイスを多自由度に改良するものである.今まで剪断力は糸による牽引力で発生させていたが,この手法を静電気力により代替することを目指した.初年度作成したディスプレイをもとに,基礎的な検証実験を実施し,これまでの提示手法そのままでは狙いの提示が難しいことが判明したため,先に錯触覚を活かした提示手法について被験者実験を通じた検証を実施することと変更し,有効な入力信号の生成手法について検討している.
また,上記変更にあわせ,並行してディスプレイで提示するための入力信号のもととなるデータベースを作成するため,日常の触覚信号を収集するシステムを先行開発した.これは,加速度センサと省電力マイコンを利用したユビキタスセンシングシステムと,信号を機械学習により分類する解析システムからなる.本システムにより日常生活で発生するさまざまな振動信号を収集,分類が可能となる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発した静電気力ディスプレイを多電極化し,タッチスクリーンを統合しマルチタッチディスプレイのプロトタイプシステムを作成する.そして,本システムに我々が開発してきた剪断力ディスプレイのアルゴリズムの適用手法を確立する.実際に発生する力との対応関係を定量的に検証し,静電気力による提示に適した制御アルゴリズムを実装する.また,剪断力のみならず,静電気力による仮想的な接触面積の制御の効果について,被験者を用いた心理物理実験を行う.
あわせて,日常生活における触覚情報収集システムを用いた振動信号の収集を実施する.その後得られたデータベースをもとに,開発する触覚ディスプレイでの提示手法を適用し,提示システムの妥当性を被験者を用いた実験を通じて検証する.
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