本研究の目的は,近年広く普及するタッチパネル上での情報化された仮想物体への直感的な双方向触インタラクションを容易なものとし,より高い質感を提示可能なデバイスのための触提示手法の確立と,錯触における人間の質感認識機序の分析である.そのため,剪力を用いた錯触現象を積極的に利用し,タッチパネルなどの平面上での仮想物体との視触一致型相互インタラクションを実現する.
これまでの提示手法そのままでは狙いの提示が難しいことが,昨年度の基礎的な実証実験から判明したため,錯触を活かした提示手法について被験者実験を通じた実証実験を実施し,有効な入力信号の生成手法について検討してきた.そのため触覚の知覚強度と触感の評価実験を行うことで入力波形と知覚刺激との関連性を調査した.入力信号をシステムに入力し,触察した被験者の主観的印象を日本語のオノマトペとして収集分類することで,静電気力による触覚ディスプレイの表現能力を検証した.その結果,知覚強度は入力波形の周波数成分に依存すること,提示可能な触感としては「粗い」や「硬い」といった触覚表現が可能であることがわかった.
また,並行してディスプレイで提示するための入力信号のもととなるデータベースを作成するため,日常の触信号を収集するシステムを開発した.これは,加速度センサと省電力マイコンを利用したユビキタスセンシングシステムと,信号を機械学習により分類する解析システムからなる.本システムを用いて収集した30種類以上のテクスチャデータを用いて深層学習を実施することで,90%以上の精度で弁別可能な機械学習器の生成を実現した.
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