研究領域 | 多様な質感認識の科学的解明と革新的質感技術の創出 |
研究課題/領域番号 |
16H01667
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 義浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (80456160)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース・インタラクション / プロジェクタ / センシングデバイス・システム / コンピュータビジョン / 知覚情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究では、動的に変化する実世界と仮想的な質感を、時空間的整合性を満たす形で融合させる技術を確立する。本年度は、このような動的質感再現のプラットフォームの構築に向けて、人間とのインタラクションによって遮蔽が生じる状況下でも高速に3次元状態を把握可能なマーカ型3次元トラッキング技術を開発した。本トラッキング技術は、物体形状の凹凸によって、マーカが遮蔽されたり、歪んで観測されたりする場合においても、安定的かつ高速にその3次元位置姿勢を取得することが可能となっている。このような高速トラッキング技術に加えて、高速映像生成や高速プロジェクタによる映像投影を連携させることで、プロジェクションマッピングに基づく動的質感再現の検証に着手し、基本的な動作検証を完了した。具体的には、ユーザが物体を把持して動かしたときに、その運動に応じて仮想的な質感の見えが違和感なく提示できることを示した。さらに、プロジェクションマッピング型の動的質感再現だけでなく、異なるディスプレイ方式として、実物体を用いることで形状や質感の自在な制御と極限的なリアリティを追求したシステムも開発することができた。これは、周期運動を行う実物体に対して、その運動と同期した臨界融合周波数を超える高速な照明を投影することで、人間の眼の残像特性によって時空間的に融合されたブレのないリアルな像を知覚することができる原理に基づく新しいディスプレイである。このディスプレイでは、その提示像を自在に変えることができるコンピュテーショナルな側面を維持したまま、裸眼で形と質感の両者の立体視ができるだけでなく、入射光と観測方向が規定する見えを動的に変化する観測状況に対しても現実と同じように再現することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高速ビジョンと高速プロジェクタの融合による動的質感再現に向けて、当初計画していた以上の成果を順調に収めている。まず、このようなプラットフォームでは、ユーザがインタラクティブに物体と触り、動かせる環境を構築することが重要であり、遮蔽頑健性と安定性、さらには高速性の3者を高いレベルで達成するセンシング技術が必要となる。本年度に実現されたトラッキング技術はこの要請を想定以上の性能で満たすものであると考えられる。さらに、当初はプロジェクションマッピング型のシステム構成を予定していたが、臨界融合周波数を利用した像の知覚と高速な照明投影技術の融合が、動的質感再現に貢献することに着目し、そのシステムを構築するとともに様々な応用事例を示すことでその強力な効果を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度に開発した基盤技術の拡張を図る。具体的には、プロジェクションマッピング型においては、視点位置や光源位置の変化に対してもインタラクティブに質感を再現できる機能の実証を検討する。また、再現できる提示範囲を拡大するために、複数台のプロジェクタを連携させる構成案も設計する。さらに、高い計算コストを要する質感映像をリアルタイムに提示するために、映像生成の高速化技術にも着手する。並行して、実物体を用いたタイプのシステムにおいては、質感のリアリティを維持したまま、形をより高い自由度と解像度で変化させることができるように、システムの拡張を図る。
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