公募研究
我が国の多くの消費者には昆虫食の習慣がなく、昆虫をみるだけでも嫌悪感を抱く者が多い。その一方で、伝統的に昆虫食を行う地域も存在する。このように文化の違いにより、同じ視覚刺激に対して両極的な感性的質感が生じる。本研究では消費者の感性的質感認知として、食品画像刺激に対する顕在および潜在的態度を測定し、食品の実食経験による認知変容の測定を試みた。実食実験の対象者は,過去に昆虫食経験のない大学生とした。過去に昆虫食の経験がある者は分析から除外した。対象者は2群にわけ、実食群では昆虫(いなご,カイコのさなぎ,蜂の子)を含めた珍味を提供し自由に試食させ、対照群では珍味の実物を見るだけとした。顕在・潜在的な態度の測定は、介入の前後で実施した。介入前後の変化量を、実食群と対照群とで比較した。昆虫画像に対する顕在的態度はビジュアルアナログスケールにより見た目と味の好みの印象を測定した。また、潜在的態度は意味プライミング課題により測定した。意味プライミング課題では、昆虫食画像(プライム)がターゲット語である食品と非食品(文房具)の判別に与える影響を、食品や文房具の画像によるプライミング効果と比較した。68名を対象に実食実験を実施した。昆虫食経験のあった13名を除外し、55名(実食群39名、対照群16名)を対象として解析をおこなった。その結果、実食群は介入後において、食味の評価と蜂の子に対する見た目の好みが上昇した。また、対照群においても観察によって変化がみられた。その一方で、いなごと蚕の蛹では介入による見かけの評価の変化はなかった。潜在的態度について、介入前後の変化を群間で比較したが、差はみとめられなかった。この結果は一度の実食経験がすぐに視覚的な潜在的態度を変容させるものではないことを示唆している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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