研究実績の概要 |
質感知覚は様々な感覚から入力された情報を処理するだけでなく、予測、意思決定、身体制御、感覚運動フィードバックなどを含んだ、多感覚的、適応的、能動的なプロセスの結果としても生じる。食質感知覚はこのようなプロセスを考えるうえで最適の題材である。それは食質感知覚には「食べる」という能動的な動作によってもたらされる感覚フィードバックの情報が大きく貢献しているからである。 これまで咀嚼音をフィードバックして食質感を変容させる様々な研究が行われてきたが、フィードバックの時間ずれや、利用できる食品の物性上の制約が課題であった。 我々は近年、咀嚼に完全に同期したフィードバック音を、あらゆる物性の食品について返すことができる画期的な手法を考案した。それは咀嚼音そのものではなく咀嚼時の咬筋の筋電波形を音に変換したものをフィードバックするという手法である。 今年度の進捗として、まず英語論文2本が公刊された(Appetite, JACIII)。また、さまざまな食質感形容詞、オノマトペ間の関係性、咬筋以外からの咀嚼運動情報計測、フィードバックの遅延と食質感変容の効果量との関連等について検討を進め、これらの成果の一部について、福祉情報工学研究会(2017年5月)、ヒューマンインターフェースシンポジウム(2017年9月)、日本接触嚥下リハビリテーション学会学術大会(2017年9月)等で発表を行った。
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